リスク計測テクノロジーズ 岡崎貫治

従業員のストレスを適切にコントロールし、高いサービス品質を創出し、生産性を向上させることが、企業の重要な経営課題となっています。そこで、「声」によって心の健康状態を可視化し、体調の変化を早期に発見・ケアできるプロダクトを開発された、リスク計測テクノロジーズ株式会社の岡崎貫治さんにお話を伺いました。

リラックスして安心して働けることが重要な経営課題になってきている

―2019年10月に創業されました。会社設立のきっかけを教えてください。

私の専門領域としては、金融機関や事業会社を対象に、信用リスク、ストレステスト、ガバナンス、金融規制対応といったリスク管理に関するアドバイザリー業務に長く携わってきました。こうした中、近年、人材リスクやオペレーショナルリスクによる生産性の低下が問題になっているという声を聞くことが多くなりました。人材リスクは、従業員の退職や休職(Absenteeism)、低パフォーマンス(Presenteeism)として現れます。日本社会が抱える人手不足の問題もあると思いますが、社会的な安心と安全に対するニーズの高まりが、業務を提供する従業員のプレッシャーとなり、従前に比べて、精神的な疲労を増大させていると考えられます。また、こうした疲労は、ヒヤリハットの件数を増やし、重大な事故へと繋がるオペレーショナルリスクの要因になっているとも言えます。従来、こうしたリスクは、リスク要因の可視化(定量化)が難しかったため、客観的かつフォワードルッキングな管理を困難としていました。しかし、発話音声を利用することで、高頻度かつ簡易に可視化(定量化)することが可能となるため、こうしたリスクを削減し、生産性向上に向けての課題解決ができると考え、リスク計測テクノロジーズ株式会社を設立しました。

―どのようなサービスを提供されていますか。

企業向けに内部統制の高度化、リスク管理体制の構築、リスク評価、信用リスク管理等に関するアドバイザリー業務を提供しています。リスク管理体制のレビューだけでなく、統計ソフト等を用いたリスクデータの分析も行っています。また、声だけで簡単に心の健康状態を可視化する「マインドヘルス計測システム」を2020年3月にリリースし、ヘルスケアとリスク管理を融合したソリューションの開発を進めています。

 

心の健康状態を可視化させたかった

―マインドヘルス計測システムをリリースされました。どのようなプロダクトなのでしょうか。

声だけで心の健康状態を可視化するというのが最大の特長です。これに加えて、①簡単・シンプル、②タイムリーな計測が可能(計測時間は僅か数秒)、③いつでも・どこでも使用可能(SaaS型)、④低コストといった利便性に配慮した特長を有します。2015年から法令でストレスチェックが義務化されていますが、年に1回しか実施されないため適時性に欠けるという問題が指摘されています。また、自記式アンケートのため、意識的又は無意識的に過小又は過大評価を行ってしまい、真の状態を把握できないという回答バイアスの問題も指摘されています。さらには、そもそも文字を読めないと回答できないというユニバーサル性に欠ける問題もあります。マインドヘルス計測システムは、これら問題に対処することが可能であり、例えば、早期にメンタルヘルスの不調を捕捉することで、従業員がまだ十分に元気なうちから、時間的な余裕を持ってリフレッシュを取ることを可能にします。こうした好循環を通じて、無自覚のまま頑張りすぎてしまうことによる、ミスや事故などのリスク回避につながることも期待されます。

―マインドヘルス計測システムはどのように生まれたのでしょうか。

リスク管理に関するアドバイザリー業務を行っていた時から、人材リスクやオペレーショナルリスクに関する相談が年々増え、重要性が増していることを実感していました。しかし、従来、これらリスクは可視化(定量化)が難しいため、定量的な裏づけに乏しいリスク評価に留まりがちで、有効的かつ効率的な管理手法の実現が困難でありました。そこで、何とかして可視化(定量化)することで、抜本的な管理手法を開発できないかと思案していたところ、発話音声の解析技術を持つPST株式会社と出会い、プロダクト化に向けた展望が見えてきました。

―類似サービスや競合サービスはありますか。また、貴社の強みについて教えてください。

2015年から法令で義務化されたストレスチェックのサービスを提供する企業、従業員意識調査及び組織改善に関するサービスを提供する企業が競合になると考えます。また、発話音声から感情を可視化するサービスを提供する企業も競合になると考えています。一方で、当社が開発するヘルスケアとリスク管理を融合したソシューションは、これら競合先のサービスの価値を上げる補完関係にあるとも考えています。当社の強みは、マインドヘルス計測システムに関する企画、設計、開発を全て一気通貫で行っているだけでなく、リスク管理やデータ分析の知見を豊富に有するところにあります。例えば、実際の現場では毎日定期的に計測することが難しいケースも多々ありますが、そうした計測状況であっても期待する効果を得るための分析を行います。また、医療福祉と運輸など、業界の違いによる計測結果の傾向の違いをきちんと調整し、うまく活用することを考えます。さらに、収集されたデータ自体にも大きな価値があると考えています。マインドヘルス計測システムは、2020年3月より市場投入されていますが、一段の改良を行うため、横浜市の協力を得て、データ収集に向けた実証実験を行う予定です。

 

社会と企業の持続的発展に貢献するリスク管理ソリューションを提供したい

―貴社のウェブサイトから、日本国内だけでなく海外から誰でも「マインドヘルス計測システム」を購入(サブスクリプション)することができるようになっています。国内だけでなくグローバル市場を目指されていると思いますが、北米市場をどのように見ていますか。

今年6月に、オンライン上で開催された、バイオ産業の展示商談会の「BIO Digital」に参加しました。医療福祉系はサービスの安心安全が高く求められる領域なので、病院や介護施設などで働く方々のケアへの需要を見出せるのではないかと思い参加しました。面談相手からは、発話音声を用いる点、回答バイアスが発生しない点、操作性に優れたアプリケーションの点で、特に良い反応が得られています。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大により、移動や対面機会に制限が生じ、今まで会ったことのない企業や組織との新しい接点を作ることが難しくなっていると感じています。米国に長く住んでいた友人などから、米国では個人の健康意識が非常に高いという声を聞くため、セルフチェック的な個人利用において、北米市場は有力と考えています。

―今後の展望についてお聞かせください。

軸として持っているのは、社会と企業の持続的発展に貢献するリスク管理ソリューションを提供したいということです。特に、ヘルスケアとリスク管理を融合させたソリューションを提供することで、働く人の元気を通じて、企業や組織の生産性の向上に貢献したいと考えます。例えば、朝の挨拶で同僚の様子を確認するような感じでマインドヘルス計測システムを使っていただき、従業員の健康と元気をサポートできればと思います。また、新型コロナウイルスの影響でリモートワークの採用が増えていますが、そうした新しい働き方における健康管理で気軽に活用いただければと思っています。

 

横浜で職住近接を実現

―横浜で起業された理由を教えてください。また横浜のビジネス環境はいかがでしょうか。

職住近接は一つの理由でもありますが、関内・桜木町というビジネスエリアは、企業と行政機関が集積しており、会社を運営していくうえでのコストは、移動時間なども含め、東京と比べ横浜の方が低いように感じます。もちろん、東京も含めた商業圏の一体化という意味で、移動の利便性が高いことも理由に上げられます。また、緑豊かで美しい公園が多く、特に関内・山下・桜木町エリアは、海を身近に感じつつ、歴史ある街並みを気軽に散策できるため、リフレッシュしやすい環境にあると考えます。もちろん、行政機関のサポートも充実しており、横浜ライフイノベーションプラットフォーム(LIP.横浜)のメンバーとなることで、実証実験の機会を頂くことができました。LIP.横浜からメルマガやLIP.横浜の担当者から配信される情報は非常に有益でとても助かっています。

 

岡崎 貫治
金融機関、信用リスクデータベース機関、金融庁、大手監査法人を経て現在に至る。リスク管理、データ分析・モデリング、コンプライアンス、内部統制、金融規制等のアドバイザリー業務を多数実施。統計ソフト(Stata, SAS, R等)、各種プログラミング言語(PHP, JavaScript, SQL, Python, VBA等)、サーバー運用(Linux)に対応。金融庁では、バーゼル3国内実施、バーゼル銀行監督委員会のリスク計測に関する部会メンバーを担当。

マインドヘルス計測システム製品概要

 

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