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北欧屈指のイノベーション・エコシステム都市、エスポ―(フィンランド)の視察レポート

執筆者 | 2023年3月7日

横浜市はイノベーションの推進※に向け、海外のエコシステム組織などとのネットワークを構築し、連携を進める取組を行っている。その一環で、2月に欧州事務所長がフィンランド第二の都市、エスポ―市を訪問した。同市は、ヘルシンキから約15分の距離にあり、人口約30万人ながら特許出願数で欧州第6位を誇り、欧州で最もサステナブルな都市に選出された実績がある。今回、同市のエコシステム視察の様子をレポートする。(トップ画面写真提供:Enter Espoo)

※【参考リンク】

エスポ―エコシスムの企業窓口:Enter Espoo

エスポ―市に属するEnter Espooは、エスポ―参入を通じたイノベーションコミュニティの成長促進を主なミッションとする機関であり、海外企業の立地支援や、立地した企業へ投資家やスタートアップ企業を紹介するなどの成長支援といったサービスを提供している。

エスポ―のエコシステムの強みは、ディープテック分野。同市に本社を置くノキア社に代表される5Gや、北欧で最大の応用研究機関であるフィンランド技術研究所(VTT)によるサステナビリティ、バッテリーといった分野の重要性が益々高まっているという。また、フィンランドのディープテックスタートアップの多くはVTT、そしてテクノロジー・アート・デザインを専門とするアアルト大学、あるいは両者の連携から輩出されるとのことであった。

※VTTは、カーボンニュートラル・ソリューション、デジタルテクノロジー(5G、センサーなど)、及び持続可能な製品と素材を主要な事業分野とする機関。詳しい情報はこちら(英語)

特に印象的だったのが、アアルト大学などによる最高レベルの教育、大学エリアを中心とするビジネスとイノベーション創出の場、公式サービス言語としての英語の導入により、海外などからの人口流入が進んでいるというお話。人口は、右肩上がりで伸び、現在約30万人で、昨年1年間で8千人増加したとのこと。首都ヘルシンキ市をも上回る。フィンランドは高齢化が進行しているが、エスポ―市では、イノベーションの推進が寄与し、いわゆるナレッジインテンシブな雇用創出など人口増に繋がっている点は、都市の持続的な成長・発展に向け、大変注目すべき点であると感じた。

 

大学と産業界をつなげる製品設計と学習のハブ:Aalto Design Factory
【アアルト大学内の施設①】

Aalto Desing Factoryは、学生が講義で学んだ知識と、製品の設計・開発とを結びつける方法を学ぶ場、実践の場としてのプラットフォーム。3,700㎡の施設は、オフィス・ミーティングスペースや、工作・印刷などのプロダクトスペースなどからなる。例えば、学生は、プロダクトスペースの機械室で、工作機へのアクセス、材料へのアクセス、ノウハウ提供を受け、試作品をつくることが可能。この施設で教授、研究者、スタートアップ(10社程度)等から起業家精神について学ぶ。

大企業など産業界との接点の場も多いという。例えば教授が特定のコースを設け、大企業等がそこへ課題を持ち込み、学生はチームを組み課題解決に取り組むというもの。企業からは一定の予算が出され、学生はそのタスクのため予算を自由に使える。

特に印象的だったのが、「失敗は次の学びの機会であるとして称賛すること。それは創造性へ重要な安心感を与えるもの」という話。失敗できる環境を整えることで、学生の新鮮なアイディアを広く受け止め、可能性を広げようとする施設の理念のようなものを感じた。

SLUSH」も生まれた、学生が運営する起業家創出のハブ:Startup Sauna
【アアルト大学内の施設②】

学生が運営しているコワーキングスペースで、起業家と投資家が集う場所。起業家による講演やピッチコンテスト、ハッカソンなど、スタートアップ関連のイベントが定期的に開催され、大学外の人も利用できメンバーシップ不要の開かれたスペースである。

設立は2009年とのことだが、元々は、3人の学生からスタート。急速な成長を遂げた後、フィンランドの学生をシリコンバレーなど海外のスタートアップへ派遣するプログラム、またスタートアップを志す人向けに10週間のアクセラレーションプログラムを立ち上げた。現在では、ハッカソンで有名な「Junction」といった様々な企業が入居する。ちなみに、アアルト大学の学生の多くはフィンランド出身だが、多くの留学生も集まるハッカソンイベントなど、Startup Saunaでは英語がより用いられるとのこと。

フィンランドが誇る世界的なスタートアップ・イベント「SLUSH」は、学生中心に運営されるイベントで知られるが、その創設者によりアアルトのエコシステムの下、この拠点で始まったとのことである。

世界トップレベルの大学アクセラレーターAalto Startup Center
【アアルト大学内の施設③】

アアルト大学発の技術に焦点を当てた大学独自のイノベーションサービスチームを有し、アーリーステージのスタートアップ企業等を対象として、アクセラレーションサービスを展開する。設立は1997年。主な取組は、ビジネスコンサルティング、デモデイの開催などによる成果発表や利害関係者とのミートアップ機会の提供、投資家などとのネットワーク提供などを行っている。その他、スタートアップを無償で支援するビジネスメンター(150~200名)のネットワークを有しており、企業や投資家などへのアクセスを支援している。

当センターでは、多くの異なるコラボレーションを取り込むを戦略としているとのことであった。例えば、同じ建屋内に欧州宇宙機関のビジネスインキュベーションセンターが入り、連携している。同分野はアアルト大学が強い関心を有する研究分野の一つで、このようなコミュニティ構築、ハブ機能といった点からも、スタートアップを支援する。

設立から25年程が経過した同施設のミッションは、社会に影響を与えることだという。「アアルト大学はイノベーションと起業家精神に重点を置く。」、「しかし、スタートアップや起業家精神に対する見方が現在のようになるには、長い時間を要した。変化に必要な重要な要素はコラボレーションである。」とのお話が特に印象に残った。なお、2019/20年には、世界トップ5の大学ビジネスアクセラレーターにランク付けされている。

最後にエスポ―のエコシステムのポイントとして感じたのは以下の3点である。

・エコシステムの特徴は、学生主導、大学が源泉であること
・大学(学生)、スタートアップ、研究機関、企業の連携スキームによるイノベーション創出の活性化
・海外との積極的な結び付きにより、エコシステムへの才能や投資の呼び込みを促進

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