2025年4月14~17日にかけて、フランス・パリのOECD(経済協力開発機構)本部で開催された国際会議「Urban Days」にて、OECDが横浜市の気候変動対策を評価したレポートを公表した。
OECDは、都市をはじめとする地域における気候変動対策が重要との考えのもと、2023年のCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)において、独自の指標で政策を評価する「TACAR(気候変動対策とレジリエンスのための地域的アプローチ)」を発表している。 TACARによって評価を受けレポートが公表された都市は、横浜市が世界初となり、本市の気候変動対策が高い評価を受けた。
強靭で持続可能な都市づくりに向けて
本会議では、欧州を中心に150名を超える首長やポリシーメーカー、専門家、学術関係者等が集い、包括的かつ循環型の持続可能な都市づくりや資金調達について議論した。あらゆる世代のための都市づくり、不足する住宅供給危機への取組、資源循環経済の推進、気候変動に立ち向かうための強靭な地域コミュニティの構築、ファイナンス等をテーマに10を超えるセッションが開催され、OECDの最新のエビデンスのもと、ベストプラクティスや知見の共有、議論がなされた。
横浜のレポートを発表するOECDのラミア・カマル・シャウイ局長
初日には、山中竹春横浜市長もメンバーの一員である、包摂的な成長の推進に取り組む世界の首長連合である「包摂的成長のための OECD チャンピオン・メイヤーズ」の第7回会合が開かれ、各国の政府に対し、都市と協力して気候変動に立ち向かうための10を超える提言がなされた。
TACAR
16日には「Spotlight on SDG 13 “Climate” – A Territorial Approach to Climate Action and Resilience (TACAR) 」と題されたセッションが開催された。
地域的アプローチとは、気候変動に対処し、脱炭素化を推進し強靭性を構築するためには都市・地域の役割が重要であるが、それぞれの地域によって課題や特性が異なるため、各地域に根ざした政策を策定するという手法である。
COP28で発表されたOECDのTACAR(Territorial Approach to Climate Action and Resilience:気候行動とレジリエンスのための地域的アプローチ)はこの考えに基づき、評価ツールと政策ガイダンスを国や都市に提供するものであり、この度横浜市が評価対象都市としてして選定された。
本報告書は、横浜市に対し、脱炭素先行地域(みなとみらい地区)における多様な脱炭素モデルの取組を公民連携で推進している点や、アジア諸都市の持続可能な都市づくりに継続的に貢献している点などを評価した。
セッションの様子。多様なセクターからの参加者により闊達な議論がなされた
報告書を発表したOECD起業・中小企業・地域・都市センターラミア・カマル・シャウイ局長 は、「本報告書は、IPCCが作成する「気候変動対策と都市に関する特別報告書」にも寄与するものであり、世界中の多くの国や都市にとって貴重な教訓を与えてくれるものと信じている。今後、私たち全員が一丸となって、場所に根ざした気候変動対策の機運を高めていくべき」と述べた。
またOECDのティンダル環境局長は、気候変動対策における都市の重要性を強調するとともに、「地域的アプローチは、国や地方自治体が、CO2排出量の削減とより強靭な社会の構築の双方において潜在力を発揮することを可能にするものであり、よりレジリエントで包括的かつ持続可能なコミュニティを構築するのに役立つ」と述べた。
また環境省の松澤地環境省地球環境審議官は、「地域と地球規模の環境問題を統合的に解決するためには、地域レベルの経験から学ぶことが極めて重要」と述べ、横浜市をはじめとする地方自治体と協力して気候変動に取り組む重要性を強調した。さらには「横浜市で2027年に開催されるGREEN×EXPO 2027 は、持続可能な社会を構築するための統合的な行動に向けて、ステークホルダー間の連携を確認する重要な機会」と述べた。
冨岡典夫国際局グローバルネットワーク推進部長が横浜市の施策を発表した
横浜市の取組
本セッションでは、横浜市から、冨岡典夫国際局グローバルネットワーク推進部長が登壇し、みなとみらい21地区における脱炭素先行地域の取組、及び、バンコク、ダナン、メトロセブにおける技術協力プロジェクトを事例に挙げ、横浜のローカルな気候アクションとグローバルなリーダーシップを紹介した。
横浜市は、OECDをはじめ、国内外のステークホルダーとの連携を深めながら、アジアスマートシティ会議 などの国際会議で積極的に知見を共有するなど、循環型の持続可能な都市づくりを進めている。