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欧州最大級のモビリティイノベーション拠点「The Drivery」が横浜へ新拠点を開設

執筆者 | 2024年12月16日

11月11日、横浜市のテック系スタートアップ支援拠点「TECH HUB YOKOHAMA」のオープンに合わせて、同施設内に「The Drivery Japan(ザ・ドライブリー・ジャパン)」の新拠点が開設(拡大移転)された。欧州とアジアの次世代モビリティ・イノベーターをつなぐ共創ハブであり、メンバーシップによる貸しオフィスやコワーキングスペースなどの提供、新規事業開発から実証実験、海外展開まで、大企業・スタートアップ双方への専門家による成長支援などを実施する。また、横浜市との連携により、モビリティ分野で新規事業創出、横浜での実証実験を目指すスタートアップ、企業に向けた相談支援サービス「モビリティ・スポットコンサル」も提供する。

The Driveryは、ドイツ・ベルリンで2018年に設立され、モビリティ分野に特化したイノベーション拠点を運営している。12,000 ㎡の広大な拠点では、プロトタイプ製造が可能なものづくり設備、小規模な走行実験などが可能。世界各国から約 130社のスタートアップや、大企業、技術者、投資家等が集まり、交流・連携からの新ビジネス創出を支援。例えば、マッチメーキングから新技術のシームレスな統合に至るまで、企業とスタートアップのコラボレーション支援を行う「Innovation program」を提供している。創業からこれまで資金調達総額は60億€を超え、これまで電動キックボードのTIER社など、ユニコーン3社を輩出している。2023年12月、横浜市はThe DriveryとMOU(基本合意書)を締結している

筆者は、3年前に初めてThe Drivery施設を訪れ、CEOのTimon RUPP(ティモン・ルップ)氏にお会いした。その際、「世界中にDriveryの施設を設立し、様々なエコシステムを理解し、ニーズについて学び、最終的には『グローバルブレイン』を形成したい」と語られたのが特に印象的だ。今回の拠点開設は、中国、韓国に次ぎ、アジアで3か所目にあたる。

先月末、筆者は再びTimon RUPP氏を訪問した。同氏は、この度の横浜への投資理由や、The Drivery Japanの今後に向けた期待などについて熱く語っていただいた。

【インタビュー概要】

Q 今回、日本の中でもなぜ横浜へ投資したのか、その理由は?

A  2つある。横浜市はオープンイノベーションの精神を理解していると感じ、実際にそのためのプログラムも有していること。横浜市長もドライブリーを訪問し、様々な交流や連携を通じ、信頼も高まった。また、横浜には既に、グローバルなメーカーやサプライヤーなど、多くのモビリティプレーヤーが集積し、我々のエコシステムをさらに強固にしていくための素晴らしい基盤となると考えた。

Q The Drivery Japanへの今後の期待は?

A  我々はすでにイベント開催を通じて、地域コミュニティの構築に成功している。市場開拓への有効性を示すいくつかのPOCプロジェクトもある。そこからは、スケーリングが重要。成功事例を増やし、The Drivery Japanを重要なネットワークへ、そして横浜を我々のエコシステムにおける世界の主要なハブにしたい。

そしてデジタルやソフトウェア、そしてハードウェア関連の確立も重要。現在、The Drivery Japanには製造スペースが備わっていないが、対応を検討している。

Q  The Drivery Japanの目標は?

A  短期には、The Drivery Japanに1,000人ほどのメンバーが参加することである。我々が横浜で形成しているコミュティ、活用しているスペース、そして最後に共に創出するイノベーションの3つのステップで考えている。

Q 欧州のスタートアップがThe Drivery Japanを通じて日本市場に参入する可能性について、どのように考えているか?

A  現在、欧州にはいくつかの大きな問題がある。一つは、行政と法制面。自動運転やドローンなどの市場におけるプロトタイプの実証実験の実現に向けた課題である。そのため、実証実験の場を提供している所に、海外進出することに大きな関心が見られる。二つ目は資金面。欧州では経済が低迷している状況のため、資金が限られている。日本からの投資は大きな魅力で、誰もが資金獲得を夢見ている。以上の理由により、欧州の企業等は、積極的に海外に目を向けている状況にあり、そのことは横浜にとってのチャンスであると考えている。

Q  欧州のスタートアップが横浜・日本へ展開する際の重要なポイントは?

A  とりわけ重要なことは、期待の管理と忍耐。日本に対して、オープンな心構えで臨むことであり、また一足飛びに興奮したり、落胆したりしないことである。製品の市場適合性に焦点を与えることが重要で、それには、学ぶという段階が必要。イノベーションには時間が必要。時間をかけて信頼を構築し、製品をマッチさせることから始めるべきであり、The Driveryは常にその準備を支援している。我々は、忍耐とオープンな心構えを持って、横浜市と関係を築いてきた。

横浜市は、The Drivery Japanの新拠点開設、そしてモビリティやClean Techを重点とした、テック系スタートアップ支援拠点「TECH HUB YOKOHAMA」の設置を契機として、モビリティイノベーションの推進や呼び込みをより一層進めていく考えである。

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