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COVID-19 #1 世界最大のロックダウン(インド)

執筆者 | 2020年5月19日

新型コロナウイルスの拡大防止策として、インドでは3/25から、約13億人を超える国民に対して事実上の外出禁止令(ロックダウン)が出されています。世界で最も厳しいと言われているロックダウンについて、少し触れてみたいと思います。

 

新型コロナウイルスの拡大防止策として、インドでは3/25から、約13億人を超える国民に対して事実上の外出禁止令(ロックダウン)が出されています。まもなく約2か月が経とうとしていますが、感染拡大が止まらず3度目の延長となり、5/31までとなりました。感染者数がついに中国を超えたというニュースを最近目にした方も多いのではないのでしょうか。

 

ロックダウンですが、インドの場合、インドの法律(災害管理法)に基づいて取られている措置で、行政上の強制力が生じ、国民はそれに従う義務があります。

 

代表的な措置の一例としては、

  • オフィスや工場の閉鎖(自粛レベルではなく強制的に会社に行けません。)
  • すべての飛行機、鉄道、バス、タクシーがストップ(移動手段が一切ありません)
  • 食料雑貨店または薬局以外の店舗はすべて閉店(レストランも閉まっています)
  • 上記店舗への買い物以外の外出は一切禁止(警棒を持った警官が常に道路をパトロール中)

などが挙げられます。

 

インドの全土封鎖は世界で最も厳しい内容と言われています。先述した通り、公共交通機関は全て運休で、道路での商用車の往来も、食料や医薬品など「必要不可欠」な品目の輸送以外は禁止とし、二輪車も同様です。普段は多くの車のクラクションが鳴っていますが、ロックダウン中は車がほとんど走っておらず、歩いている人もほとんどいないため、街はゴーストタウンのように静まり返っています。

 

インドのロックダウンにおいて注目すべきポイントは、判断力と実行力の早さです。

 

3月24日の夜にモディ首相が演説し、「今日(24日)の深夜12時(25日0時)から、21日間、インド全土を封鎖する」と宣言し実行に移しています。

 

当時はインド全土でも感染者数は500名にも満たない状況でしたが(※現在は10万人を超えています)、上記のような厳しい施策を早い段階で実行に移したのは、人口13億人のインドにおいて、爆発的に増えることを懸念したためです。「この21日間の封鎖に真摯に向き合わなければ、インドは今後『21年間の遅れ』をとることになる」というモディ首相からの言葉がとても印象的でした。

 

と同時に、それほど感染者が多くないのに、「ここまで厳しい措置を、約13億人のインド国民が21日間も果たしてちゃんと守るのだろうか?」と当時は正直半信半疑でした。しかし、翌日から外出をちゃんと控え、外出する時には普段は全くしないマスクを着用したり、普段はあんなにパーソナルスペースが狭いインド人の皆さんがスーパーでの入場待ちの際は、距離をしっかりと保って待つなど、感染が拡大しないよう、国全体でコロナとの闘いに挑んでいる様子を直接目の当たりにしました。また、家にいると、普段は車のクラクションがよく聞こえてくるのですが、聞こえてくるのは鳥や犬の鳴き声だけで、同じ家で過ごしているのですが、最初は不思議な違和感を抱いていました。

 

一時期、日本のニュースにおいて、インドの警察官が外出しているインド人を厳しく取り締まっている様子がよく流れたそうで、「インドは怖いところだ」という印象をお持ちになった方もいらっしゃったと思います。しかし、こうした断片的な情報だけではなく、飛行機や車、電車の移動も一切できない、外食も一切できない状況が2か月近くもの間、インドではずっと今もなお続いており、13億人近いインド国民ひとりひとりが、1日も早い収束に向けて、厳しく制限されている生活に必死に耐えているという事実もどうか知っていただけたらと思っています。(余談ですが、感染が深刻な地域以外では今は緩和されましたが、お酒やタバコは生活必需品ではないということで1か月以上、一切買えない状況が続きました。)

 

さて、インドでは3月にあっという間にロックダウンに至った訳ですが、実は、ロックダウン開始前の1週間も、次々と「え?」と驚くようなニュースが続き、色々と振り回された結果、最終的にロックダウンに至りました。日本ではあまり報道されていないかと思いますので、少しだけお伝えしたいと思います。

 

  • 3/17(火):翌日以降、オフィスへの出勤体制は半分以下にするようにという政府からの指示を受ける。
  • 3/19(木):夜、モディ首相の演説。(※当時、国内感染者は計173人)

①3/22から1週間、全ての国際線の着陸を禁止。

②3/22(日)の7時~21時までの外出を一切禁止。

  • 3/20(金):夜、マハラシュトラ州政府が、3/21(土)午前0時から州内5都市(ムンバイ等)を閉鎖すると発表。全企業は3/31まで原則閉鎖。

→当事務所のオフィスビルも完全閉鎖という連絡を急に受け、一切入れなくなる。

  • 3/22(日):演説通り、7時~21時までインド全土で一切の外出禁止
  • 3/23(月):3/25から全ての国内線の航空便が禁止と発表。
  • 3/24(火):夜、モディ首相の演説。(※当時、国内感染者は計469人)

翌日3/25~4/14までの3週間の全土封鎖を発表。

 

日本では考えられないようなスピーディーでダイナミックな展開ではないでしょうか。振り返ると、何らかの新しい情報が次々に突然やってきては対応していくという毎日でした。

 

ロックダウン以外にも、1月末から2月にかけて中国などからの旅客検査を実施し、3月中旬には全ての観光ビザを無効にするなど、入国を制限する措置を早々と行ってきたのですが、残念ながら依然増え続けている状況です。しかし逆に言うと、このような措置をとっていなければ、確実にもっと多くの感染者が出ていたと思います。今でもなお続いているロックダウンですが、1日も早く制限の無い生活に戻ってほしいと切に願っています。

 

参考

横浜市では、市内企業・団体等の皆様にお役立ていただくため、感染が世界的な拡大の兆しを見せた2020(令和2)年2月から、フランクフルト、上海、ムンバイ、ニューヨークに所在する4つの事務所が、それぞれの所在地域における新型コロナウイルス感染症に関する情報を独自に収集し、神奈川新聞及び各事務所のウェブサイトで発信してきました。

そのような、まさに現地に駐在している職員だからこそ可能な、現地における市民生活への影響、経済活動の動向、感染症対策などに関する情報発信は約1年間に渡り、57件を数えました。このたび、それらを「コロナ禍の世界 記録集」として一冊にまとめ、改めてお届けします。

コロナ禍の世界 記録集(2020~2021年)27.57MB

 

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