2012年から毎年開催されるHLPFには、各国の閣僚級を含むリーダーや、NGOなど市民社会の代表者が参加し、政治的リーダーシップや指針を提供し、あらゆるレベルにおいて全体的かつ横断的に、持続可能な開発の経済・社会・環境の側面の統合を強化するため、新たに発生する課題などが議論されています。
最終回は、HLPFのハイレベルセグメントとVNR(自発的国家レビュー)をはじめとする各国のSDGs達成に向けた動向等にハイライトを当てて報告をします。
HLPFハイレベルセグメント
7月15日(月)から17日(水)の3日間では、経済社会理事会のハイレベルセグメントとしてHLPF閣僚級会議が開催され、約90の首脳、閣僚などの政府高官が出席し、一般討論が行われました。
閣僚級会議のオープニングでは、パウラ・ナルバエス国連経済社会理事会議長は、ガザ、南スーダン、ウクライナなど世界の紛争について言及し、SDGsを達成するためには経済社会理事会は単なる目標達成の監視機関ではなく、アイデアを交換するプラットフォームとしてとして機能することが必要と言及されました。また、デニス・フランシス国連総会議長からは、現在11億人が多次元的貧困(Multidimensional Poverty)にあり、もし有効な措置がとられなければ、SDGsの目標年次である2030年においても世界の人口の8%、6億8,000万人が飢餓に苦しみ続けるという厳しい見通しが共有されました。子供と若者のための主要グループ(UN MGCY)のサメ・カメル氏からは、若者を代表して、緊急的な国際金融システムの改革や大胆で即応的な多国間主義の必要性、経済社会理事会におけるユースフォーラムの重要性など、更なるアクションの必要性について述べられました。
SDGsに関する自発的国家レビュー (VNR)
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、国連加盟国が、国及び地域レベルにおいて、定期的にSDGsを巡る進捗に関する自発的国家レビュー(VNR: Voluntary National Review)を行うことを奨励しており、毎年HLPFではVNR策定国がVNRをHLPFに提出・報告しています。
今年のHLPFハイレベルセグメントでは、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベリーズ、ブラジル、チャド、コロンビア、コンゴ共和国、コスタリカ、エクアドル、赤道ギニア、エリトリア、ジョージア、ギニア、ホンジュラス、ケニア、ラオス、リビア、モーリタニア、モーリシャス、メキシコ、ナミビア、 ネパール、オマーン、パラオ、ペルー、サモア、シエラレオネ、ソロモン諸島、南スーダン、スペイン、シリア、ウガンダ、バヌアツ、イエメン、ジンバブエの36か国がVNRを提出したことが報告されました。
日本政府は、2017年に第1回目、2021年に第2回目のVNRを発表し、HLPFで報告をしていますが、今回のHLPF閣僚級会合では穂坂泰外務大臣政務官によるステートメントとして、来年のHLPFにVNRを実施する考えが示されました。併せて、同ステートメントでは、SDGs達成に向け、日本政府が重視している三点として、①「誰一人取り残さない」というSDGsの原点に立ち返り、人間の安全保障の理念の下、人間の尊厳に基づき、各国の体制や価値観の違いを超えて連帯するべきこと、②多様なステークホルダーとの連携、③、低所得国や脆弱な国々を支えることについて触れられ、引き続き、国際社会全体でのSDGs達成に向けて主導的役割を果たしていく決意が述べられました。
また、7月17日には、日本政府外務省及び公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)の共催で、公式サイドイベントとして「SDGsのためのマルチステークホルダーによるプラットフォームは、VNRプロセスを含む国家レベルのフォローアップおよびレビューにどう関与しているのか(How are multi-stakeholder platforms for SDGs involved in the follow-up and review process at national level including the Voluntary National Review process?)」が国連本部において開催されました。
セッション冒頭では、日下部国際協力局審議官からも、SDGs達成に向けた3つの重点が述べられ、IGESからは日本政府がどのようにマルチステークホルダーをSDGsのフォローアップとレビュー(FUR)プロセスに組み込んでいるか紹介がありました。さらに、IGESは、シナジーのケーススタディ収集・分析を進め、今回「国際協力において気候変動対策とSDGsに相乗効果(シナジー)をもたらすJICAの取組事例」を公表することが発表された。その後、フィンランド、ドイツ各国代表からも、どのようにマルチステークホルダーをFURプロセスへ参加させているか共有があり、パネリスト間で活発な議論が行われました。
こうしたVNRの重要性に加え、HLPFの様々な場面では、SDGs達成に関する自治体の役割も強調されていました。SDGsで定められた169のターゲットのうち、少なくとも65%以上は都市や自治体の関与なしでは達成されないと言われています。
SDGsの自発的なレビューの自治体版は、Voluntary Local Review (VLR)と呼ばれますが、横浜市は2021年に初のVLRを策定し、国際的な都市間連携を進めています。米州事務所としても引き続き、こうしたSDGs推進に係るグローバルな議論の最新動向を注視し、ニューヨークから横浜に発信していきます。
https://businessyokohama.com/jp/2021/10/28/yokohama-2021-vlr-sdgs-2/