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【HLPF2025報告③】国連Local2030 Coalition特別イベントで横浜市が登壇―地域から加速するSDGs実現-

執筆者 | 2025年7月20日

国連「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」は、SDGsの進捗を各国・各主体がレビュー・共有する国際的な政策フォーラムです。毎年7月にニューヨーク国連本部で開催され、政府、国際機関、自治体、市民社会、学術機関など幅広いステークホルダーが参加します。

このHLPFの期間中には、SDGsに関する多様な形式の会合が開催されます。その中でも「特別イベント(Special Events」は、国連経済社会局(UN DESA)が主要な国際機関やステークホルダーと連携して企画・実施する注目度の高い会合であり、高等教育機関、民間セクター、地方自治体、国会議員など、SDGsの実現に関わる幅広い主体の関与を促すことを目的としています。これらのイベントは毎年異なるテーマのもと開催され、HLPFの公式プログラム内に位置づけられる政策的にも重要な機会とされています。

そのうちの一つとして、7月16日に開催された特別イベント「Local2030 Coalitions Special Event」は、「ローカライゼーション(Localization)」を通じた6つのSDGs移行(SDG Transitions)加速に焦点を当てたもので、マルチレベルでの協働、政策の整合、包摂的な参加によってシステム変革を促す取り組みが紹介されました。

冒頭では、セバスチャン・ヴォゼル(Sébastien Vauzelle)氏(国連Local2030連合 事務局長)の進行の下、アナクラウジア・ホスバッハ(Anacláudia Rossbach)氏(国連事務次長補兼国連人間居住計画(UN-Habitat)事務局長))、アミナ・J・モハメッド(Amina J. Mohammed)国連事務次長からの基調演説が行われ、地域で暮らす人々を起点とした持続可能な社会設計の重要性、 多層的かつ包摂的な協働(multi-level, multi-stakeholder approach)の不可欠性、対話と共創に基づく地域起点のシステム思考の必要性などについて様々な角度から触れられました。

イベントでは、各地域でSDGsのローカリゼーションを実践する各都市のリーダーなどにより各地域好事例を共有するセッションが設けられ、横浜市からは米州事務所(ニューヨーク)が登壇し、「市民参加に基づいた地域行動がグローバルな変革を生む」との視点から、以下の取り組みを紹介しました。

ヨコハマSDGsデザインセンターとY-SDGs認証制度

横浜市は、地元企業と連携して「ヨコハマSDGsデザインセンター」を設立し、官民共創による実践支援を進めています。その取組の一環として「Y-SDGs認証制度」では、ESGおよび地域貢献に関する30指標で企業・団体を評価し、認証を受けた825の事業者に対して、10の金融機関等からの資金・非資金的支援へのアクセスを提供しています(2025年3月時点)。これらの取組は2025年春の国連開発資金国際会議(FfD4)の「Road to Seville」報告書にも好事例として取り上げられています。

食品ロス削減SDGsロッカーとSTYLE100の展開

また、同センターは市民参加型の実装支援にも注力しており、売れ残りのパンを割引販売する自動販売機「食品ロス削減SDGsロッカー」の展開が代表例です。売れ残りのパンをSDGsの視点から再定義し、公民連携により2025年2月までに5.1トンの食品ロス削減を実現しました。現在は8カ所に展開されており、100の持続可能なライフスタイルを紹介する「地球1個分で暮らそうSTYLE100」キャンペーンの中核事例にもなっています。

アジア都市間とのグローバル連携

さらに横浜市は、こうした地域発の好事例をグローバルに展開すべく、アジアスマートシティ会議(ASCC)を通じた都市間連携を長年主導しています。フィリピン・マンダウエ市との協働では、ごみ分別・リサイクルの改善により、年間4,500トン超のごみ削減と3,000トンのCO₂排出削減を実現しました。2025年のASCCでは、「循環型都市」の加速と、2027年に横浜で開催されるGREEN×EXPO 2027へ向けた国際的機運醸成が期待されています。

国際開発金融機関(MDBs)との連携

また、同会議を通じて世界銀行やアジア開発銀行(ADB)などの国際開発金融機関(MDBs)との連携も進んでおり、2024年にはADB調達制度をテーマとした実務者向けワークショップも開催されました。こうした金融アクセス支援も、地域からのSDGs加速には不可欠な要素となっています。

市民参加を基盤とした地域起点の行動が、SDGsの進展にとっていかに本質的であり、国際的にも波及し得るかを示した今回の登壇を通じ、横浜市は今後、High Impact Initiative on Localizationへの参画を強め、各国都市とともに「包摂的でレジリエントな未来づくり」に貢献していく意向を表明しました。

 本特別イベントには、横浜市のほか、モルディブ、マルタ、ドイツ・シュトゥットガルト市、ポルトガル、ナミビアなど、各国の自治体や関係機関が参加し、それぞれの地域課題に応じたSDGsのローカリゼーション実践事例が共有されました。社会的弱者への支援やエネルギー効率の改善、地域住民との共創によるまちづくりなど多様な取り組みが紹介される中、横浜市の市民参加型のフードロス削減や企業との協働による地域循環型モデルには、多くの関心と評価の声が寄せられました。

横浜市としては、こうした国際的な場を通じて他都市の創意工夫や実践からも積極的に学びつつ、自らの地域発の取り組みをグローバルな課題解決につなげていくことを目指しています。米州事務所としても今後一層、北米をはじめとする国際ネットワークの構築や、横浜の先進的な取り組みの対外発信を強化し、地域発のSDGs推進に貢献してまいります。

当日のイベントについては下記よりご覧になります:https://webtv.un.org/en/asset/k1b/k1bwe11qih

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