米国都市のライフサイエンス・エコシステム

世界のスタートアップ・エコシステム・ランキングを発表している米国の民間調査会社Startup Genomeが、2021年にスタートアップ・エコシステム・ランキングのライフサイエンス版を発表した。上位には米国都市が立ち並ぶ。シリコンバレーに代表されるように、米国では、スタートアップの地域エコシステムが発展している。地域ごとに産業特性は異なるが、多くの都市がライフサイエンス・エコシステムの構築に注力している。

ライフサイエンス・エコシステムに関連したランキングは複数存在し、ランキングの実施主体によって、目的やターゲットが異なるものの、いずれのランキングも1位と2位は、ボストン、又は、サンフランシスコ・ベイエリア/シリコンバレーとなっている。ボストンは、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)といった世界有数の大学・研究機関とその周辺に集まる製薬企業の拠点やスタートアップなどによって、地理的な集積度の高いライフサイエンス・クラスターが形成されている。シリコンバレー/サンフランシスコ・ベイエリアは、言わずと知れた、イノベーションのメッカであり、強靭なスタートアップ・エコシステムと莫大な資金力がライフサイエンス分野にも波及している。3位以降は、トップ2都市を追いかけるようにしのぎを削っている。例えば3位のニューヨークでは、市政府による10億ドルのライフサイエンス・イニシアティブ「LifeSci NYC(ライフサイ・エヌ・ワイ・シー)」が実施され、ライフサイエンス・エコシステムの形成が進んでいる。

ライフサイエンス・エコシステム
  順位 各項目スコア
パフォーマンス ファンディング ナレッジ タレント インフラ ポリシー
シリコンバレー 1 10 10 10 10 10 10
ボストン 2 10 10 8 9 10 10
ニューヨーク市 3 10 10 8 7 10 10
ロンドン 4 9 10 7 10 10 6
サンディエゴ 5 10 9 8 4 9 10
ロスアンゼルス 6 7 7 8 8 8 10
ワシントンDC 7 8 8 7 4 8 10
フィラデルフィア 8 9 8 5 5 7 10
上海 9 9 9 10 5 4 4
リサーチトライアングル 10 8 6 4 9 5 10

そこで、本稿では、米国諸都市のライフサイエンス・エコシステムの状況・特徴、そして、官民のイニシアティブがどのようにライフサイエンス・にエコシステム形成に影響しているかを見ていく。