北米特集記事

ニューヨーク市のテック企業集積と地域特性:チェルシー

執筆者 | 2021年6月22日 | ニューヨーク市のテック企業集積と地域特性, 特集記事

チェルシーはタウンハウスやアパートビルなど住宅も多く、オフィスビルはかつての工場や倉庫、ショールームなどであった。チェルシー地域の範囲は広く9番街を境に西チェルシーと東チェルシーに分けて呼ばれることもある。

 

貨物鉄道ハイラインが通った西チェルシーには大型の工場や倉庫などが並んでいた。例えばオフィスとリテイルの複合施設のチェルシーマーケットはナビスコで知られる製菓会社の元工場を開発したものである。90年代にソーホーの家賃高騰からアートギャラリーが西チェルシーへ移ってくる。1995年にはスポーツ複合施設チェルシーピアがハドソン川の埠頭にオープン、1997年にチェルシーマーケットがオープンする。チェルシーマーケットのオフィスのテナントはメディア系企業が入り、同開発のすぐ南に位置するミートパッキング地域には食肉包装に使われていた空間をレストランやファッション店舗としてオープンする店が相次いだ。更にGoogleがチェルシーマーケットの真向かいのビルに2006年にオフィスを持ち、西チェルシーは斬新かつ洗練されたエリアとして認知され、有名シェフのレストランのオープンなども続く。2009年には貨物鉄道のハイラインが公園として生まれ変わり住民やオフィスワーカーに緑の環境を与えるだけでなく多くの観光客が訪れるエリアともなった。

 

東チェルシーにあるオフィスは町工場的なインダストリアルなビルが多くフラットアイロン地域よりも外観の装飾が減りビルの空調も取り付け型エアコンで対応しているオフィスもある。ただフラットアイロンや西チェルシーより家賃が低く立地が良いためスタートアップからの人気はある。

 

CoStar Dataによると、チェルシーの2020年平均年間賃料は1平方フィート当たり62.71ドル。2020年2月の自己の調査では東チェルシーのストリート沿い物件の年間賃料は40―50ドル代の物件があるのに対し、西チェルシーの新築ビルのオフィス賃料は104ドルと開きがある。

 

チェルシーに立地する主なテック企業オフィス:

Twitter、IAC、Googleなど

 

※記載内容は、2021年3月31日時点の情報。

 

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【執筆者】

Miki-Hall Motegi / 茂木ホール美紀, Whitebox CRE Solutions, President.

神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1990年にニューヨークに渡る。全日空ニューヨーク支店で北米予算とプロモーションを担当。第二子出産後に、日本政府観光局(JNTO)のニューヨーク支店で国際会議誘致を担当する。夫の仕事の関係で2011年から3年半を南麻布で過ごした後、2014年の夏にニューヨークに戻りミレニアル世代とジェンZの母親達のワークライフバランスの実現に向けての姿勢と葛藤、また仕事に対する考え方の変化などについて育った環境や人種も異なる母親達に取材をする。

2016年にIT企業やスタートアップをクライアントにもつ米系商業不動産リーシングファーム、ヴァイカスパートナーズに入りオフィス仲介業をする傍ら、商業不動産のランドスケープの変化からミレニアル世代の特徴と働き方への意識の変化を分析。JETRO IPA ニューヨーク主催の「ニューヨークスタートアップエコシステム」の日本セミナーでは、同市スタートアップエコシステムに関わる欧米人6人と共にスピーカーとして参加。その後もオフィス形態やデザイン、オフィス立地の変化などからミレニアル像を分析する講演を行う。2020年に1月にWhitebox CRE Solutionsを設立。イノベーションと空間をテーマに、コワーキングスペースやイノベーションハブのツアー、また商業不動産やプロップテック(プロパティーテクノロジー)の動向について講演や執筆を始める。新型コロナ禍でリモートワークが浸透する中、新たな日常での働き方とワークプレイスについて調査を続けている。現在ニューヨークのブルックリン地区に高校卒業前の息子と愛犬ブルックリン、そして夫と暮らす(長女は大学寮にいる)。

Miki-Hall Motegi Whitebox CRE Solutions

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