2025年9月25日、米ニューヨークで開催された世界でも最大級の気候変動イベント「Climate Week NYC 2025」(開催期間:9月21日〜28日)において、横浜市は、確認できる範囲では日本の自治体として初めて公式サイドイベントを主導したと認識しており、本市としても国際的なクライメート・アクションを都市の立場から推進する新たな一歩となりました。「Yokohama Smart City Collaboration Forum」と題された本プログラムは、クリーンエネルギー、スマートシティ、ファイナンスの各分野における日米および国際的な連携を促進し、都市主導のクライメート・アクションを推進することを目的として開催されました。
Climate Week NYCは、2009年から毎年9月の国連総会期間にあわせて開催される国際的な気候変動イベントであり、同種の催しとしては世界最大規模として、政府、企業、市民社会、国際機関など多様なステークホルダーが集うプラットフォームとして定着しています。今回の横浜市による取り組みは、気候行動における都市・地域単位での取組の重要性に注目が集まる中で、自治体としてのリーダーシップを国際社会に示す重要な機会となりました。
主催は横浜市米州事務所(ニューヨーク)で、フォード財団が主導するGlobal Futures Network(GFN)がリーディングスポンサーとして協力しました。さらに、日本政策投資銀行(DBJ)、西村あさひニューヨーク事務所、ShibuLA Venturesなど、産官学を横断する多様なパートナーが連携し、午前・午後を通じて延べ約160名の関係者が会場に集結しました。
当日は、午前にクライメートテック分野のスタートアップと日本企業・投資家によるマッチングセッション「Yokohama Clean Tech Gateway」を、午後には都市、金融、技術を横断する国際フォーラム「Smart Cities, Shared Futures」を実施し、政策・産業・学術の各分野を結ぶ議論が行われました。
午前:日米クリーンテック連携を促進する「Yokohama Clean Tech Gateway」
午前のセッション「Yokohama Clean Tech Gateway」は、Greennex Globalの協力のもと、日本企業・投資家と米国のクライメートテック・スタートアップが一堂に会する招待制のマッチングイベントとして実施された。
冒頭では、横浜市米州事務所の西川副所長が挨拶し、日米両国の革新的エコシステムを結ぶ「実践的なパートナーシップ構築の重要性」を強調しました。続いて、横浜発のスタートアップであるSUN METALON(サンメタロン)株式会社の西岡和彦CEOが登壇し、独自の加熱技術を用いた“ゼロエミッション金属リサイクル”の取り組みを紹介しました。汚染された産業廃棄物を現場で直接再生し、高付加価値の金属素材として循環させる同社の技術は、横浜から生まれたイノベーションがいかにグローバルに展開し得るかを示す象徴的な事例となりました。
その後、Greennex Globalのキュレーションにより、米国各地から選ばれた7社のクライメートテック企業が登壇しました。EV充電インフラ、分散型エネルギー制御、次世代バッテリー素材、建築物向け熱エネルギー貯蔵、CO₂鉱物化、AIによるインフラ最適化など、多様な分野の最前線技術が紹介されました。これらの企業は、Breakthrough Energy、Toyota Ventures、AWS、Greentown Labs、Newlab、Activateなど、世界有数の投資家・アクセラレーターから支援を受けており、フォーチュン500企業との連携や全米各地での実証を進めています。本セッションは、日米企業間の協業を通じて、実装可能なクライメート・ソリューションの共創をめざすものであり、今後の実証や事業連携に向けた具体的な協議のきっかけとなった。
ピッチの際は、オリ・カレブ氏(Ori Karev)がコメンテーターとして登壇しました。カレブ氏は、United Healthcare国際部門の経営や複数のユニコーン企業の成長支援に携わってきたほか、米国・欧州・イスラエルで投資家・メンターとしてテクノロジースタートアップの育成に関わってきた経験・知見を生かし、米国スタートアップ企業へのコメントを寄せました。
日本側から17社の大企業・投資機関が、また、海外投資家5社も加わり、気候テック領域への国際的な投資連携に高い関心を示しました。
ピッチ終了後には、ランチネットワーキングが行われ、日米のスタートアップ、投資家、都市関係者、国際機関など、政策・金融・技術といった多様なバックグラウンドを持つ参加者が集い、気候変動対応に向けた協働の方向性や都市間連携の展望について活発な意見交換が行われました。午前の議論で生まれたつながりは、午後の「Smart Cities, Shared Futures Forum」にもつながるかたちで、都市・企業・研究者が連携する新たな議論へと発展しました。
午後:都市・金融・技術を横断する「Smart Cities, Shared Futures Forum」
午後は一般公開形式のフォーラム「Smart Cities, Shared Futures: Bridging Asia and the World through Cities Collaboration」が開催され、都市リーダー、国際機関、研究者、投資家、企業関係者らが集い、都市を基軸としたグローバル連携の可能性について議論が行われた。
開会にあたり、横浜市米州事務所の関谷所長が挨拶を行い、都市が気候変動の最前線に立ち、現場から政策と実装を結びつけていく重要性を強調するとともに、今回の議論がCOP30やアジア・スマートシティ会議(ASCC)など、今後の国際的な対話の場へとつながっていくことを述べました。
Global Futures Network(GFN)のキャシー・ハン氏と横浜市米州事務所の西川副所長が登壇し、都市とテクノロジーの関係を中心に議論が行われました。議論では、気候変動や健康格差などグローバルな課題に対し、AIやデジタル技術をどのように公共の利益のために活用できるか、そして都市がその推進役としてどのように機能すべきかが論点となりました。
西川副所長からは、横浜市が進めるゼロカーボンやサーキュラーエコノミーの取組み、さらに「食品ロス削減ロッカー」などの市民共創型のプロジェクトを通じ、地域の課題を新しい協働の形に転換している事例が紹介されました。一方、ハン氏からは、GFNが推進するAIを活用したスマートシティ連携や、次世代リーダー育成プログラムの構想が共有され、都市とネットワークが連携してローカルなイノベーションをグローバルに展開していく重要性が強調されました。
全体として、本セッションは「都市がテクノロジーと市民の橋渡し役としていかに機能できるか」という視点を共有し、この後のフォーラム全体の議論の方向性を示す場となりました。
基調講演では、ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所のケント・E・カルダー教授が登壇し、「From Local Innovations to Global Pathways – Cities as Strategic Actors in Climate Action(ローカルイノベーションからグローバル・パスウェイへ:都市が担う戦略的役割)」と題して講演を行いました。カルダー教授は、都市が国際社会の中で新たな外交・経済の主体として存在感を高めている現状を紹介し、C40やWorld Urban Forumなどの市長ネットワークを通じた国際的な政策協調の重要性を指摘しました。
また、ニューヨーク市やシンガポール、香港の先進的な取組に加え、横浜市の2050年ゼロカーボン目標など、世界各都市の事例を挙げながら、自治体や市民社会が主導する具体的な行動が気候変動対策を前進させており、世界の各都市が互いに学び合いながら連携を深めることがより持続可能で包摂的な未来を築く鍵となる点が強調されました。
基調講演の後、以下の3つの重要なテーマに沿ってパネルセッションが順次行われました。
【Policy】都市外交とグローバル連携 ― ローカルアクションからグローバルインパクトへ
最初のセッションでは、「From Local Action to Global Impact – Advancing Inter-City Collaboration for Climate Solutions(地域の行動から世界的な変化へ)」をテーマに、UN-Habitatアフリカ地域事務所長ウマル・シラ氏、C40 Cities気候アクション実施マネージングディレクターのアディティ・マヘシュワリ氏、ニューヨーク市長室国際局アジア・中東地域担当ディレクターのアマンダ・レフソン氏が登壇しました。モデレーターは、横浜市米州事務所のニコライ・ミュース氏が務めました。
セッションでは、都市が現場での気候対策を通じて国際的な目標に貢献していく方法や、都市間協働がもたらす政策的・制度的インパクトが議論されました。国際機関やネットワークの役割として、知識共有や技術・金融支援を通じて各都市の実行力を高める仕組みの重要性も確認されました。
また、国境を超えた都市間連携の意義についても意見が交わされ、横浜市がアジア・スマートシティ会議(ASCC)などを通じて培ってきたネットワークづくりの経験を踏まえ、地域発の行動が国際的な政策変化を促す可能性が共有されました。
【Finance】気候ファイナンスの新潮流 ― スマートシティ実現を支える資金循環
続くセッションでは、「Financing Smart Cities – The Role of ESG, Impact Capital and MDBs(スマートシティの資金調達 ― ESG・インパクト資本・国際開発金融機関の役割)」をテーマに、DBJ Americas CEOの下澤範久氏、Amalgamated Bankチーフ・サステナビリティ・オフィサーのアイヴァン・フリッシュバーグ氏、世界銀行City Climate Finance Gap Fundの都市専門官チャンダン・デウスカー氏が登壇しました。モデレーターは、ShibuLA Ventures共同創業者兼CEOの二宮ケビン氏が務めました。
セッションでは、都市の気候変動対策に必要な資金をどのように確保し、持続的な投資循環を生み出していくかが議論されました。ESG投資やインパクトファイナンスの潮流が紹介され、民間資本を都市の脱炭素やスマートインフラ整備に引き込む新たな手法が注目されました。また、国際開発金融機関(MDBs)が果たす役割として、政策支援、リスク分担を通じて地方都市や新興都市のプロジェクト実現を後押しする枠組みの重要性も指摘されました。
特に、横浜をはじめとする地方都市の経験を参考に、地域金融機関や企業が関与する官民連携モデルが、都市の持続的な開発と気候対策を両立させる鍵になり得るとの見方が共有されました。
【Technology】技術と知の統合 ― 都市から生まれる気候ソリューションの拡大へ
最後のセッションでは、「Integrating Technology and Knowledge – Scaling Urban Climate Solutions(技術と知の統合 ― 都市が生み出す気候ソリューションの拡大)」をテーマに、Columbia Technology Venturesプログラムディレクターのティモシー・ホフマン氏、UCバークレー グローバルエクスパンション部門責任者のジョージ・パナギオタコプロス氏、京都大学コミュニケーション推進担当であり、National Innovation Network for Entrepreneur Japan(NINE Japan)にも関わる武田秀俊氏が登壇しました。モデレーターは、UCバークレーのジョージ・パナジオタカポラス氏が務めました。
セッションでは、日米の大学・研究機関・スタートアップ・自治体が連携し、クライメート分野をはじめとする都市課題の解決にいかに技術を活用できるか、そしてそのためのエコシステムをどのように構築していくかが議論されました。学術と産業の知見を結びつけ、都市を実証の舞台として社会実装を進める取り組みが紹介され、研究開発から事業化に至るまでのプロセスを支える仕組みづくりの重要性が共有されました。
また、武田氏からは、日本全国の大学・研究機関を結ぶ新たなイノベーション・ネットワークである「NINE Japan(9JP)」の取り組みが紹介されました。横浜市もそのメンバーとしてNINE Japanに参加していますが、日本の大学発のクライメート関連スタートアップの動きが活発である事例として、横浜発で海外展開を進めるつばめBHBなどの事例も挙げられ、都市から生まれる技術革新が国際的な市場・社会課題の解決にどのように繋がるのか議論されました。
クロージング:グローバル都市連携の深化に向けて
本フォーラムは、横浜市が長年主催してきた「アジア・スマートシティ会議(ASCC)」を通じて築いてきた都市間協力の経験を基盤とし、都市、企業、国際機関、研究者が一堂に会し、政策・金融・技術の各側面から持続可能な都市間連携の可能性が議論されました。
フォーラムの締めくくりとして、ニューヨーク日本商工会議所専務理事の前田正明氏がクロージングリマークを行いました。前田氏は、横浜にルーツを持つ立場から、気候危機の克服には国境や分野を越えた協働が不可欠であると述べ、横浜市がその最前線で重要な役割を果たしていることへの期待を表明しました。
横浜市は、今回の成果を踏まえながら、今年11月に開催されるCOP30やアジア・スマートシティ会議、そしてGREEN×EXPO 2027に向けて、議論をさらに発展させ、より持続可能で包摂的な未来の実現を目指していきます。




























