今回は、スタートアップ特集シリーズとして、横浜マッチングプログラム第1期採択企業であり、日本市場への参入を実現した韓国スタートアップ「Raven Materials」をご紹介します。
Raven Materialsとは?
Raven Materialsは、「RP; Black TiO₂(黒色酸化チタン)」と呼ばれる次世代先端材料を開発しています。この材料は、従来材料の代替だけでなく、半導体、ディスプレイ、航空宇宙、水素製造、コーティング、接着剤、カラーレジスト、環境浄化技術など、幅広い分野で新たな用途を可能にするものです。
同社は長年解決されてこなかった課題である、「黒色酸化チタンを商業的に成立する規模で量産する方法」の実現に取り組んできました。同社によると、Raven Materialsは黒色酸化チタンのスケーラブルな製造プロセスの開発に世界で初めて成功した組織であり、これによって産業利用拡大への道が開かれました。この材料は紫外線だけでなく可視光にも反応する特性を持ち、空気浄化、水処理、グリーン水素製造、セルフクリーニング表面、エネルギー関連技術などの用途で注目を集めています。
日本市場へのゲートウェイとしての横浜
横浜マッチングプログラムへの参加から約1年が経過した現在、創業者のディラン・キム氏は、日本が同社にとって最も重要な市場の一つになったと語ります。
Dylan Kim 氏(Raven Materials CEO兼創業者)
「材料科学や化学分野において、日本は私が経験した中でナンバーワンの国です。日本企業は技術を深く理解しようとし、本当に何を作っているのかを理解しようとしてくれます。」
キム氏にとって、プログラム最大の強みの一つは「適切な人とのつながりを生み出すこと」でした。
横浜マッチングプログラムによるメンタリング、特に横浜市内企業COSIMO LLCの疋田彰宏氏による支援を通じて、Raven Materialsは、自社のBlack TiO₂技術の可能性や、日本市場における事業機会を理解する業界関係者や潜在的パートナーとつながることができました。
CBCによる仁川工場訪問
Raven Materials仁川工場を訪問した三木産業株式会社の関係者
「疋田さんは最初から適切な方々を紹介してくれました。」
キム氏はそう振り返ります。
キム氏によると、スタートアップと関連業界の関係者をつなぐこうした機会こそが、横浜マッチングプログラムの最も価値ある側面の一つでした。
横浜マッチングプログラムと横浜のイノベーションエコシステムは、疋田氏やCOSIMOのようなアドバイザーとの接点を提供することで、海外スタートアップの日本進出を支援しています。
こうしたつながりは、その後、コーティング、水素製造、先端材料、産業用途など、さまざまな分野における複数のPoC(実証実験)へと発展しています。
横浜での出会いが実際の成果へ
キム氏は、TECH HUB YOKOHAMAが有意義なネットワーク形成を支援したことについても言及しています。日本訪問時には、従来の営業チャネルではなかなか接触できない大企業の関係者と、より身近な環境で交流することができました。
「TECH HUB YOKOHAMAでは、日本の大企業の方々と直接話す機会を得ることができました。そうしたつながりは通常であれば非常に作りにくいものです。」
そして現在、それらの対話は具体的な協業へと発展しています。キム氏によると、Raven Materialsは現在、日本の大手企業約8~9社とPoCプロジェクトを進めています。実際、同社が創業した韓国よりも、日本の方が進行中の企業案件数は多い状況です。
RP(Black TiO₂)Raven MaterialsのBlack TiO₂は、OLED業界で使用されている既存の商用ブラックマトリクスと比較して、可視光領域で200%高い吸収性能を示しながら、赤外線透過性を維持しています。
これらのプロジェクトの一部は、Raven Materials独自のRP(Black TiO₂)技術の実用的な産業用途に焦点を当てています。
日本企業A社とのPoCでは、この材料の超親水性特性を活用したセルフクリーニングコーティングを評価する予定です。これにより、雨水を利用した建物表面の自動洗浄が可能になります。
ディスプレイ分野では、日本企業B社へのサンプル供給を開始しており、カラーレジスト用途に関するPoCも進行中です。さらに、日本企業C社とは、RPの可視光応答型光触媒機能を活用した空気浄化フィルターについて協議が進められています。
これら以外にも、グリーン水素製造、太陽光エネルギー、航空宇宙材料、高機能コーティング、次世代産業技術などの分野で、10社以上の日本の大手企業と実証実験や事業開発活動を進めています。
なぜ横浜なのか?
東京は日本のスタートアップエコシステムの中心として認識されることが多いですが、キム氏は横浜には独自の強みがあると考えています。
同氏は横浜について、同規模の都市と比べて混雑が少なく、住みやすく、世界的人材や大企業にとってますます魅力的な都市になっていると評価しています。横浜は東京駅から電車で約30分という立地にあり、首都圏の人材・資金・ビジネス機会へアクセスできる一方で、高い居住環境も兼ね備えています。
日本第2の都市として、都市規模と生活の質のバランスを提供しており、多くの海外起業家にとって魅力的な環境となっています。
横浜・山下公園
キム氏は横浜の住環境についても次のように語ります。
「混雑が少ないだけでなく、大企業も他の地域から横浜へ移転し始めているので、仕事もたくさんあります。また、子ども向けの素晴らしいインターナショナルスクールがあるとも聞いています。
もし機会があれば、会社を上場させる前に横浜に住居を持ちたいと思っています。実際に疋田さんに、子どもたちにとって良い地域はどこかと聞いているんですよ。本当です!」
そう語りながら笑うキム氏は、近い将来、横浜に事業拠点を設立することへの強い関心も示しました。実際に、横浜市は、SUUMOによる「住みたい街ランキング」において、首都圏で8年連続第1位に選ばれています。
Raven Materialsに続くために
今後、Raven Materialsは日本企業との関係をさらに拡大するとともに、資金調達や市場参入に関する新たな機会を模索していく予定です。
キム氏は、いつか日本の株式市場に上場することが夢だと語っています。
Startup Expo Japanに出展したRaven Materials
キム氏は、日本市場への参入を目指すスタートアップに向けて、非常に重要なアドバイスを一つ挙げました。
それは、「正直であること」です。
「持っているものを誇張してはいけません。できることとできないことを明確に伝えるべきです。技術が面白ければ、日本企業は一緒に取り組み、その技術をさらに発展させるために協力してくれます。」
横浜マッチングプログラムにとって、Raven Materialsの事例は、適切な紹介と長期的な関係構築の価値を示しています。プログラム参加から1年後、同社は日本を代表する産業企業との活発な協業関係を築いています。
まさにこのような成果こそが、本プログラムが目指しているものです。
2026年度横浜マッチングプログラムの募集は6月30日に開始予定です。横浜または日本市場への展開に関心のあるスタートアップの皆さまのご応募をお待ちしております。
※一部の連携先の企業名は、秘密保持契約(NDA)および継続中の事業協議への配慮から非公開としています。













