ハドソンスクエアは印刷業地域として知られてきた。市庁舎、連邦と州裁判所があるダウンタウンや金融街に近く即座の変更や訂正に対応できる立地であることが印刷業として発展したことに一役買ったといえよう。築年数が長く歴史があるビルも多く、天井が高く重厚で装飾が施されたロビーを持つビルもある。
デジタル時代に入り、ハドソンスクエアの印刷会社の数は減りメディア企業がオフィスを構えるようになる。また34丁目以南のオフィス家賃が高騰していく中で、それまでチェルシーやフラットアイロンにオフィスを持つデザインスタジオや、テックのスタートアップ、ファッション企業のオフィスなども2010年代に入り増えてくるようになる。オンラインを中心にデザイン重視かつ処方箋メガネを販売するワービーパーカー(Warby Parker)も同地区にオフィスを持つ。CoStar Dataによると2020年のオフィス平均年間賃料は1平方フィート当たり72.21ドルとフラットアイロンやチェルシーの平均賃料を上回る。
ハドソンスクエアを通り抜けるハドソンストリートには南のトライベッカ、北のウエストヴィレッジともお洒落なレストランやカフェが並び、またソーホーとも隣接することからクリエイティブ系の高感度な層が遊ぶ場所は豊富。そして西のハドソン川に沿うハドソンリバーパークに近くアウトドアを楽しむことが可能で、自転車などでの他地区への移動がしやすい。これら要素により同地区には高級賃貸アパートやコンドミニアム建築の計画が増えている。またテック企業以外の大型オフィスビルの開発としては大手ネットワークのABCを傘下に持つディズニーがコロンバスサークルから移転し2024年にオープン予定である。
ハドソンスクエアに立地する主なテック企業オフィス:
PayPal、Flatiron Health、Square、Googleなど
※記載内容は、2021年3月31日時点の情報。
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【執筆者】
Miki-Hall Motegi / 茂木ホール美紀, Whitebox CRE Solutions, President.
神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1990年にニューヨークに渡る。全日空ニューヨーク支店で北米予算とプロモーションを担当。第二子出産後に、日本政府観光局(JNTO)のニューヨーク支店で国際会議誘致を担当する。夫の仕事の関係で2011年から3年半を南麻布で過ごした後、2014年の夏にニューヨークに戻りミレニアル世代とジェンZの母親達のワークライフバランスの実現に向けての姿勢と葛藤、また仕事に対する考え方の変化などについて育った環境や人種も異なる母親達に取材をする。
2016年にIT企業やスタートアップをクライアントにもつ米系商業不動産リーシングファーム、ヴァイカスパートナーズに入りオフィス仲介業をする傍ら、商業不動産のランドスケープの変化からミレニアル世代の特徴と働き方への意識の変化を分析。JETRO IPA ニューヨーク主催の「ニューヨークスタートアップエコシステム」の日本セミナーでは、同市スタートアップエコシステムに関わる欧米人6人と共にスピーカーとして参加。その後もオフィス形態やデザイン、オフィス立地の変化などからミレニアル像を分析する講演を行う。2020年に1月にWhitebox CRE Solutionsを設立。イノベーションと空間をテーマに、コワーキングスペースやイノベーションハブのツアー、また商業不動産やプロップテック(プロパティーテクノロジー)の動向について講演や執筆を始める。新型コロナ禍でリモートワークが浸透する中、新たな日常での働き方とワークプレイスについて調査を続けている。現在ニューヨークのブルックリン地区に高校卒業前の息子と愛犬ブルックリン、そして夫と暮らす(長女は大学寮にいる)。