地理と交通

モンゴメリー郡はメリーランド州の中央部に位置し、米国の首都コロンビア特別区(ワシントンDC)の北に接しており、ワシントンDCを中心とする大都市圏の一部に含まれている(Google Map)。郡庁所在地は基礎自治体の中で最も人口の多いロックビル市(Rockville)である。なお、米国では、住民の総意によって基礎自治体の設立が決定されるため、自治体が設立されない地域もある(非法人地域)。モンゴメリー郡では、シルバースプリング(Silver Spring)やベセスダ(Bethesda)といった非法人地域に特に人口が集中している。

最寄りの空港には、メリーランド州ボルチモアにあるボルチモア・ワシントン国際空港(Baltimore/Washington International Thurgood Marshall Airport)のほか、バージニア州にはワシントン・ダレス国際空港(Washington Dulles International Airport)やロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港(Ronald Reagan Washington National Airport)などがある。

モンゴメリー郡にある公共交通機関は、ワシントンDCのダウンタウンへの通勤利用者が多いことから、ワシントンDCへのアクセスが充実している。代表的な公共交通機関として、ワシントンDCを中心にメリーランド州やバージニア州に広がる地下鉄「ワシントンメトロ(Washington Metro)」のレッドラインが郡内を通っている。また、ワシントンDCとメリーランド州近郊都市を結ぶ通勤鉄道「MARC Maryland Area Regional Commuter)」のブランズウィック線(Brunswick line)は、モンゴメリー郡内の複数の駅で停車している。さらに、都市間鉄道AmtrakのワシントンDCユニオン駅シカゴ(イリノイ州)ユニオン駅を結ぶキャピトル・リミテッド(Capitol Limited)は、ロックビル駅を停車駅としている。こうした従来の鉄道に加え、ワシントンDCの東に接するメリーランド州プリンスジョージズ郡(Prince George’s County)とモンゴメリー郡を結ぶライトレール「パープルライン(Purple Line)」も、2022年~2024年の運行開始を目指し、建設が進められている。

 

統計(人口、産業)

モンゴメリー郡の人口は1,052,567人(2018年、米センサス)で、人口に占める白人の比率は60.2%と全米平均より10ポイント以上低い(全米:76.5%)。一方、アジア系は15.6%で全米平均よりかなり高くなっている(全米:5.9%)。25歳以上に占める最終学歴が学士卒業以上の割合は59.0%2014-2018年)で、全米の31.5%27.5ポイント上回っている。平均所得は106,287ドル(2014-2018年)で、全米平均の60,293ドルの約1.8倍と所得水準が非常に高い地域となっている。

産業別では、専門的・科学的・技術的サービス業、医療及び社会福祉業、小売業、管理・支援及び廃棄物処理並びに改善サービス業における雇用数の全産業合計に占める割合が大きく、なかでも専門的・科学的・技術的サービス業は全米平均と比べてもかなり高い(2016年、米センサス)。

 

急成長を遂げるIT産業

モンゴメリー郡には、ヘルスケアや国家安全保障など重要な分野でのイノベーション創出に貢献する多くのIT産業の大手企業が拠点を構えており、スタートアップを支えるアクセラレーターやインキュベーターも充実している。モンゴメリー郡経済開発公社(The Montgomery County Economic Development CorporationMCEDC)によると、同郡にはメリーランド州で最もSTEMscience, technology, engineering, and mathematics:科学・技術・工学・数学)系職が集中しており、IT関連雇用数は約9万人を誇り、2014年以降のベンチャー投資契約数は189件、資金調達総額は約6億ドルに達している。またモンゴメリー郡には、メリーランド州ボルチモア郡ボルチモア市に拠点を置くジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の分校や、メリーランド大学システム傘下のシェイディー・グローブ大学(The Universities at Shady GroveUSG)の分校などを通じて、優秀な研究大学がIT関連の奨学金を提供しており、上級学位を取得している住民の割合が全米で最も多い(住民の32%が修士号を取得)。

IT産業のなかでも、モンゴメリー郡にはサイバーセキュリティを専門とした企業が149社と多く存在しており、2019年度に150億ドルの連邦予算がついたサイバーセキュリティ分野でのサービスやソリューション開発に励んでいる。また、ゲイザースバーグ市(Gaithersburg)にある米商務省(DOC)傘下の米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and TechnologyNIST)は、ロックビル市に国家サイバーセキュリティ・センター・オブ・エクセレンス(The National Cybersecurity Center of ExcellenceNCCoE)を構えており、サイバーセキュリティ分野における産学官連携を推進している。

 

連邦政府機関との連携により充実するライフサイエンス・
エコシステム

モンゴメリー郡は、バイオテクノロジーとライフサイエンスのハブでもあり、バイオ医薬品、医療機器、遺伝子治療、ヘルスケア関連アナリティクス・ビックデータなど多岐にわたるバイオ企業300社以上と、米国国立衛生研究所(National Institutes of HealthNIH)や米国食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)、NISTといった連邦政府機関が拠点を構える。 また、上述のジョンズ・ホプキンス大学やUSGの分校や、モンゴメリー・カレッジ(Montgomery College)といったローカル大学も様々なバイオテクノロジープログラムを提供しており、USGでは201911月に16,200万ドルをかけて最新の生物医学・工学教育センター(Biomedical Sciences and Engineering Education FacilityBSE)を開設したほか、モンゴメリー・カレッジも、8,800万ドルを投じて生命科学教育センター(BioScience Education Center)を設立した。さらに、モンゴメリー郡政府は現在、シルバースプリングに拠点を置く不動産開発業者のグローバル・ライフサイエンス開発公社(Global LifeSci Development Corporation)と協力して、30億ドル規模のライフサイエンス研究ハブ「ビバ・ホワイトオーク(Viva White Oak)」を、FDA本部の近隣で開発している。同ハブには、ホテルや小売店、コミュニティ広場なども建設される予定で、FDAへのアクセスに加え、周辺の医療施設や研究大学との官民学連携を通じて生物医学分野のイノベーション推進に寄与することが期待されている。

なお、ヘルスケアの分野においても、モンゴメリー郡にはゲイザースバーグ市に拠点を構えるヘルスケアプロバイダーのアドベンチスト・ヘルスケア(Adventist HealthCare)がシルバースプリングに20198月に開設した総合医療センター「アドベンチスト・ヘルスケア・ホワイトオーク医療センター(Adventist HealthCare White Oak Medical Center)など、最新設備が整った医療施設が数多くあり、ヘルスケア関連雇用やイノベーション創出を支えている。

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