北米特集記事

ニューヨーク市のテック企業集積と地域特性:ファイナンシャルディストリクト(Financial District – 金融街)

執筆者 | 2021年Aug3日 | ニューヨーク市のテック企業集積と地域特性, 特集記事

金融街(ファイナンシャルディストリクト)の公園や駅、建築物などは数々のレノベーションや復元工事を経てきた。70年代に治安が悪化していたバッテリーパークには新たな庭が加わり自由の女神、エリス島を臨むウォーターフロントのデザインも一新された(1)。

地下鉄のターミナル駅、フルトンストリート駅は古く利用者にとって使い勝手が悪いデザインだったが、フルトンセンター(Fulton Center)駅として2018年にオープン。イーストリバーのサウスストリートシーポート(South Street Seaport)のショッピングアーケードや美術館もレノベーションがなされ、有名シェフのレストランやイベント会場もオープン。サウスストリートシーポートのランドマーク区域の中のストリートの一階のカフェやレストランに人は集まる。歴史がある金融街のビルの中には重厚で天井が高くハイエンドの演出がしやすいからか、2017年にはトライベッカの老舗レストランNobuが金融街に移転しNobu Downtownをオープンする。

またビジネス街だった同地域は住宅ビルの建設やオフィスビルから住宅ビルへの改装が進み住宅の戸数が増える。2018年のmetro誌によると2001年以降、住宅戸数は3倍の6万1千戸に増加、4千戸が建設中とある(2)。ブロードウェイのOne Wall Streetのオフィスビルからコンドミニアムへの改装はニューヨーク市の歴史上最も大規模で566戸が住宅になる(3)。そして同ビルの一階にはWhole Foodsが入り2021年にオープン予定。

ミレニアルは金融街のアパートに住むようになり子育てを終えた夫婦が郊外の一軒家を引き払い同エリアのコンドミニアムに移るなど、金融街には人が暮らす街、観光客が訪れる街の多様性が加わり、オフィスワーカーにとっても公園の充実、近隣レストランや遊ぶ選択肢の拡大などアメニティが増え、テック企業もオフィスを構えるようになる。その理由の一つにオフィス家賃が比較的まだ低いこともある。CoStar Dataによると2020年、平均年間家賃は1平方フィート当たり59.06ドルと、フラットアイロン、チェルシー、ヘラルドスクエアに比べても低い。

(1) Brian Kachejian, History of New York’s Battery Park, ClassicNewYorkHistory.com, March 31, 2021
(2) Nikki M. Mascali, 17 years after 9/11, Financial District having a residential renaissance, metro, September 10, 2018
(3) Michael Young, One Wall Street’s residential conversion and addition continues in the financial district, New York YIMBY, February 18,2021

ファイナンシャルディストリクトに立地する主なテック企業オフィス:

Uber、Spotify、Policygeniusなど

※記載内容は、2021年3月31日時点の情報。

 

【関連ページ】

 

【執筆者】

Miki-Hall Motegi / 茂木ホール美紀, Whitebox CRE Solutions, President.

神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1990年にニューヨークに渡る。全日空ニューヨーク支店で北米予算とプロモーションを担当。第二子出産後に、日本政府観光局(JNTO)のニューヨーク支店で国際会議誘致を担当する。夫の仕事の関係で2011年から3年半を南麻布で過ごした後、2014年の夏にニューヨークに戻りミレニアル世代とジェンZの母親達のワークライフバランスの実現に向けての姿勢と葛藤、また仕事に対する考え方の変化などについて育った環境や人種も異なる母親達に取材をする。

2016年にIT企業やスタートアップをクライアントにもつ米系商業不動産リーシングファーム、ヴァイカスパートナーズに入りオフィス仲介業をする傍ら、商業不動産のランドスケープの変化からミレニアル世代の特徴と働き方への意識の変化を分析。JETRO IPA ニューヨーク主催の「ニューヨークスタートアップエコシステム」の日本セミナーでは、同市スタートアップエコシステムに関わる欧米人6人と共にスピーカーとして参加。その後もオフィス形態やデザイン、オフィス立地の変化などからミレニアル像を分析する講演を行う。2020年に1月にWhitebox CRE Solutionsを設立。イノベーションと空間をテーマに、コワーキングスペースやイノベーションハブのツアー、また商業不動産やプロップテック(プロパティーテクノロジー)の動向について講演や執筆を始める。新型コロナ禍でリモートワークが浸透する中、新たな日常での働き方とワークプレイスについて調査を続けている。現在ニューヨークのブルックリン地区に高校卒業前の息子と愛犬ブルックリン、そして夫と暮らす(長女は大学寮にいる)。

Miki-Hall Motegi / 茂木ホール美紀, Whitebox CRE Solutions, President.

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