北米特集記事

コロンビア大学(Columbia University):後編

執筆者 | 2022年1月25日 | 大学スタートアップエコシステム, 特集記事

コロンビア大学(Columbia University)は、学内でのイノベーションエコシステム構築に加え、自治体や同じくニューヨーク市に拠点を構える多くの大学と連携した取り組みにも加わっている。そこで後編では、コロンビア大学も含め、ニューヨーク市に数多く集まる大学間の連携を核とするイニシアチブとして特徴的なNYC Media Labについて紹介する。

ニューヨークの大学とメディアの連携を促すNYC Media Labの概要

NYC Media Labは、メディア及びテクノロジー分野におけるイノベーション促進と雇用創出に向け、ニューヨーク市に拠点を構える大学と民間企業のコレボレーションを促進する目的で2010年に設立されたコンソーシアムである。創設グループは、ニューヨーク市経済開発局(New York City Economic Development Corporation:NYCEDC)、コロンビア大学、ニューヨーク大学工学部タンドン校舎(New York University Tandon School of Engineering)であり、その後、ニュースクール大学(The New School)、ニューヨーク市立大学(City University of New York:CUNY)、スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(School of Visual Arts:SVA)、マンハッタン・カレッジ(Manhattan College)、プラット・インスティテュート(Pratt Institute)の5校と、20社を超えるメディア・テクノロジー関連の民間企業がパートナーとして参加している(1)。メディア大手には、Associated Press(AP)、Bloomberg博報堂DYホールディングス)、NBCUniversal MediaNew York Times等が名を連ね、テクノロジー関連企業には、通信大手のVerizon Communicationsやストックフォト大手のShutterstock等がいる(2)。

NYC Media Labが展開する起業家・スタートアップ企業支援プログラム

NYC Media Labでは、アクセラレーター・プログラムのCombineや、Verizon Communicationsとの提携による5G EdTech Challengeプログラム、人工知能(Artificial Intelligence:AI)技術の開発に携わる大学生チームやスタートアップ企業を対象としたAI & Local News Challenge等を通じて、周辺地域の大学生やスタートアップ企業、起業家を支援している。 

Combineは、メディア関連技術分野で起業を目指すチームを対象としており、起業家向けのメディア講座や、NYC Media Labネットワーク上の民間企業や大学の専門家からのメンターシップが提供され、プログラム終了時に最大1万ドルが支給される他、参加チームが起業に成功した場合は最大2万ドルが提供される(3)。同プログラムからは、サブスクリプション方式で提供する次世代の仮想現実・拡張現実(Virtual Reality・Augmented Reality:VR/AR)ヘッドセットを開発するAI & VR Immersive Experienceや、高齢者用グループ体操教室をコンピュータービジョンで安全に監視するプラットフォームを開発するLYFEproofといったスタートアップ企業が誕生している(4)。 

5G EdTech Challengeプログラムでは、大学や非営利のグループを対象に、5G通信を使った学習・教育関連の新しいアプリケーションの開発を支援している。5G EdTech Challengeでは、毎年10チームが選定され、合計100万ドルの賞金が支給される他、15週間に亘る製品・プロトタイプ開発向けのカリキュラムを通じて、各グループに技術支援やメンターシップが提供される(5)。同プログラムからは、学生同士が仮想空間で協力して研究を行えるバーチャルラボを開発する5G COVET(ニューヨーク大学とコロンビア大学の共同チーム)や、K-12(幼稚園から高校3年生までの)ロボット工学クラス向けにロボットの複雑な仕組みをわかりやすく教える拡張現実(AR)ツールを開発する5G K-12 Robotics Classroom(タフツ大学〔Tufts University〕のチーム)等が選定され支援を受けている(6)。

AI & Local News Challengeは、2022年1月31日に開始予定の新しいプログラムであり、大学生のチームやスタートアップ企業を対象に、AIを活用し報道機関のニーズを満たす技術の開発を支援する。同プログラムでは、自動化、アルゴリズム、機械学習、コンピュータービジョン、深層学習、自然言語処理、自然言語育成といった幅広い技術を用いて、ジャーナリズムの質を高め、報道機関の抱える問題を解決することが求められている。プログラムへの参加が認められたチームには、賞金最大7,500ドルに加え、メディア業界関係者からのメンターシップや、NYC Media Lab及びそのネットワークのチームからのガイダンスが提供される。参加チームは、プログラムの最後にNYC Media Labコミュニティに対して開発した技術をデモし、最優秀賞として1チームに1万5,000ドル、優秀賞としてもう1チームに7,500ドルが与えられ、報道機関とパイロットプロジェクトを継続する機会も提供される(7)。

主要組織のリンク(アクセス:2021年12月20日)

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