北米特集記事

コロンビア大学(Columbia University):前編

執筆者 | 2021年12月23日 | 特集記事, 大学スタートアップエコシステム

コロンビア大学(Columbia University)は、米国最大都市ニューヨークのマンハッタン中心部にある大学で、国内外の多様なバックグラウンドを持つ学生や教員が大都市の豊富なリソースを活かし、研究や教育に取り組んでいる(1)。US Newsの2021年グローバル大学ランキングでは、ハーバード大学(Harvard University)、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)、スタンフォード大学(Sanford University)、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley:UCB)、オックスフォード大学(University of Oxford)に次ぎ、世界6位にランクインしている(2)。

同大学からはスタートアップ創業者も数多く誕生しており、PitchBook Dataが発表している「スタートアップ企業(3)の創設者を生み出したトップ50の学部プログラム」ランキング2021年版(4)では、15位(631名)につけた。コロンビア大学の発表によると、同大学生まれのスタートアップ企業数は3,000社以上で、2020年の資金調達額は合計66億ドルに達したとしている(5)。

コロンビア大学のイノベーションエコシステム

こうしたスタートアップの創業を後押ししているのが、コロンビア大学のイノベーションエコシステムである。同大学において、イノベーションエコシステムに関する情報提供や連携・橋渡し等で重要な役割を担っているのは、学長室(Office of the President)傘下のコロンビア・アントレプレナーシップ・イノベーション・デザイン(Columbia Entrepreneurship, Innovation, and Design:Columbia Entrepreneurship、以下「Columbia Entrepreneurship」)である。Columbia Entrepreneurshipは、同大学のイノベーション・起業関連プログラムを促進させる目的で2013年夏に設立された部門で、具体的には、コロンビア大学にあるイノベーションハブの連携のサポートと、コロンビア学生、教員、卒業生向けの学際的なイノベーションリソース、プログラム、授業の開発をミッションとしている(6)。

Columbia Entrepreneurshipはそのウェブサイトで、コロンビア大学のイノベーションエコシステムを構成する主要な組織やプログラムを紹介している。これらは①パートナーシップ、②プログラム、③ペタゴジー(pedagogy:教授法)という3つのカテゴリーにわかれている。それぞれについて、その特徴を見ていくと、①パートナーシップでは、学外リソースの連携・活用に重点が置かれており、具体的にはキャンパス外にあるニューヨーク市内のアクセラレーターやインキュベーター等のイノベーション拠点となる施設や、同大学が他組織と連携して実施しているコンペなどが含まれている。また②プログラムには、起業に必要なスキルや知識を提供する学内リソースを中心としたプログラムが複数リストアップされている。そして、③ペタゴジーでは、同大学における学術的成果の実社会への展開を重点した教育プログラムが並んでいる。

コロンビア大学イノベーションエコシステムを構成する3本柱

① パートナーシップ コワーキング施設のColumbia Startup Lab:CSL(コワーキングスペース大手WeWorkのマンハッタンにあるSoho Westオフィス内にコロンビア大学卒業生向け施設として設置されている)やNew Lab(ブルックリン地区の海軍造船所跡地Brooklyn Navy Yardに2016年に設立されたシェアオフィス。コロンビア大学はNew Labの戦略的パートナー組織のひとつに名を連ねている)、アクセラレーターのMetaProp Accelerator、ベンチャーコンペのColumbia Venture Competition等が含まれる(7)。
② プログラム 先進的なソリューションの設計についてコロンビア大学の学生、教員、卒業生に専門スタッフやフェローが講座、ワークショップ、イベント等を通じて指導するDesign Studio、コロンビア大学の経済学部及び工学部の修士課程向けのスタートアップアクセラレータープログラムColumbia Technology Founder’s Track:CTech、社会問題の解決につながるイノベーションの開発を目的としたプロジェクトベースのイニシアチブ・課程であるDesign for Social Innovation、起業を目指すコロンビア大学生・卒業生に法律ワークショップ・相談を提供するStartup Law Studio等がある(8)。
③ ペタゴジー データ科学及びコンピューター科学とその他の学科を組み合わせ、データ駆動型社会に適したカリキュラムを開発するプログラムCollaboratory(詳細は後述)、国防、諜報、その他の連邦政府機関に関係する国家安全保障問題の解決方法を模索するコロンビア大学生向け課程のHacking for Defense:H4D等がある(9)

出典:Columbia Entrepreneurship, Innovation, and Design:Columbia Entrepreneurshipウェブサイトを基に作成

このほか、Columbia Entrepreneurshipでは、学外リソースとして、起業を目指す学生や研究者等に対して、金融サービス企業Stripeの起業手続き支援ツールや、シードアクセラレータY Combinatorのピッチ・資金調達に関する助言サイトの他、起業の基礎、ビジネスモデルの構築、ネットワーキング(ニューヨークのテクノロジー関連イベント等)、インスピレーション(コロンビア大学卒の起業家による成功例)等、起業に関するさまざまな情報が得られる各種リソース(スタートアップツールキット)を紹介している(10)。

データ社会で活躍する人材育成を目的としたCollaboratory

コロンビア大学の提供する充実したイノベーション推進プログラムのうち、Collaboratoryは膨大なデータやコンピューティングに対する理解の必要性が高まる現代社会において、産業界、政界、学界といったさまざまな分野のキャリアを目指すコロンビア大学生のニーズに応えている。同プログラムは、Columbia Entrepreneurshipとコロンビア大学のデータ科学研究所(Data Science Institute)が2016年に共同設立したもので、同プログラムを通じてコロンビア大学11学部以上で合計32のCollaboratoryクラスが創出され、合計6,000人以上の学生が参加している。データ科学及びコンピューター科学とコラボレーションした学科の例としては、看護学、建築学、音楽、哲学、生産工学、環境学、公共政策学、歴史学、社会福祉学、神経科学、経営分析学、教育学等、幅広い分野に跨っている(11)。

主要組織のリンク(アクセス:2021年12月20日)

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