経済社会活動の再開が、NY州では5月15日、北部の一部地域で始まった。NY市域については、州の再開計画 “New York Forward” の ”7つの基準” のうち3つしかクリアできていないため、Stay-at-Home を求める行政命令 “New York State on Pause” が5月28日まで延長された。こうしたなか、ニューヨークの密を利点として活かして仕事をしてきた、いまニューヨークで今後を考えている企業の再開への取り組みが注目される。

“New York Forward”の目標は、クオモNY州知事いわく、密な状況を作らずに経済の生産性を向上させることである。Social  distancing は経済•社会の基本認識になった。Social distancing は、今だけでなく、PostCOVID-19でもなく、未来に向けての共通認識になりつつある。今はその転換点にあるのだと感じる。
Working from home が、緊急避難的な措置ではなく、通常の働き方になり、ウェブ会議やウェビナーが経済的、効率的なコミュニケーション手段としてではなく、通常のワークスタイルになる。いま議論されている New Normal(日本では「新しい生活様式」)の典型だろうか。アメリカや日本は基本的にはこの方向に向かうとは予想する。COVID-19を機に大きく針路を変えようとしているようだ。

ただ、もちろんこれがすべてではない。人と人とのコンタクトがもたらす経済的あるいは文化的な価値は消えないし、そのプラットフォームである都市の存在意義も失われない。ニューヨークには、物質的な資産だけでなく、人々を惹き付ける価値が集積している。その集積こそが都市の中の都市、ニューヨークなのだ。メトロポリタンオペラ、ブロードウェイ、マジソンスクエアガーデン、ヤンキースタジアムと、そこで繰り広げられるオペラ、ミュージカル、NBA、MLBがあってこそのニューヨークだ。こうした価値がまた、ビジネスを創出し、企業を引き寄せている。

企業も都市も、COVID-19を経験した今、仕様がないから元に戻るという選択肢はない。これまでやってきたことだから変えられないという言い訳も通らない。Social distancing を受け止めて、Working from home を受け入れ、ウェブ会議やウェビナーなど技術を駆使し、そしてなお何を持ち続けるかとその新しい活性化策を追求し、New Normal を築いていかなければならないのではないか。

話は少し遡るが、ニューヨークで劇場、レストランが閉鎖された直後の3月25日、メトロポリタンオペラの Peter Gelb 総裁は、今シーズンの公演中止とその間のアンコール公演の無料配信を発表した。
「私たちMet Operaは、5月のシーズン閉幕前に公演を再開できないことが明らかな今、2020-21シーズンのことを考えています。現在の異常な試練の時に、オペラや芸術はいま脅かされている世界中の国々と人々に癒しを与えます。そこで、アンコール公演を毎晩日替わりで無料配信することにしました」
これを聞いて、メトロポリタンオペラの存在意義はまさにその通り、だから世界の首都ニューヨークにあるのだと。と同時に無料配信は非常時の臨時的な手段だと思った。今 Social distancing を受け止めると、配信がメトロポリタンオペラの New  Normal における軸になるのではと微かに危惧する自分に気づいて苦笑する。
メトロポリタンオペラはメトロポリタンオペラの New Normal を築いてファンをオペラハウスに惹き付け続けるだろう。2020-2021シーズン開幕の9月をやはり楽しみにしている。

-machts

 

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