北米特集記事

ニューヨーク市のテック企業集積と地域特性:フラットアイロン/ユニオンスクエア

執筆者 | 2021年6月8日 | ニューヨーク市のテック企業集積と地域特性, 特集記事

フラットアイロン地区の名称は、ニューヨークのアイコニックビルの一つフラットアイロンビルに由来。フラットアイロンの真南にユニオンスクエア地域が位置しは14丁目を境にする。かつての工場や倉庫ビルだったオフィスはロフトスタイルの高い天井、大きな窓、壁や柱が少なく同じフロアにスタッフ皆が集まれる環境をテックのクリエイティブ層が好んだ。また歴史ある中層ビルが多く、例えば19 世紀に建てられたブロードウェイの旧ロード&テイラー(老舗百貨店)ビルのように外観に建設された当時のヨーロッパ風の装飾を残す。

フラットアイロン、ユニオンスクエア両エリアともテック企業のみならず、デザイン会社のようなクリエイティブ系、広告代理店などのオフィスもあり、感性が高く時代の先端を行く人達が集まることから高級からカジュアルまでお洒落なレストランが多く、5番街にはナイキ、ルルレモンなど人気店も出店している。毎日グリーンマーケットが開かれているグリーンマーケットは住民、ホワイトカラー/クリエイティブワーカー、観光客で賑わっている。

2018年のユニオンスクエア・コマーシャルマーケットレポートによると、ユニオンスクエア公園の周り、14丁目から23丁目のブロードウェイと5番街のリテイル店舗の年間賃料は1平方フィート当たり350―550ドル(1)。2019年11月に同地域のブロードウェイ沿い物件の賃料を問い合わせた際には1平方フィート700ドルの物件もあり、マンハッタンの中でもリテイル賃料の高い地域の一つである。2020年のオフィスの平均年間賃料はCoStar Dataによると1平方フィート当たり70.46ドル。自己のリサーチでは2020年3月のユニオンスクエアを臨むオフィスは90ドルを超えていた。その一方で通り沿いの物件は50ドル代と同じ地区でも立地により大きな差が出る。

(1)https://static1.squarespace.com/static/58b4791ad2b857c893179e34/t/5b030928f950b75de2146956/1526925608385/2018+%2805-01%29+Commercial+Market+Report-WebVersion.pdf

フラットアイロン/ユニオンスクエアに立地する主なテック企業オフィス:

Compass、Zillow、Netflix、Yelpなど

※記載内容は、2021年3月31日時点の情報。

 

【関連ページ】

 

【執筆者】

Miki-Hall Motegi / 茂木ホール美紀, Whitebox CRE Solutions, President.

神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1990年にニューヨークに渡る。全日空ニューヨーク支店で北米予算とプロモーションを担当。第二子出産後に、日本政府観光局(JNTO)のニューヨーク支店で国際会議誘致を担当する。夫の仕事の関係で2011年から3年半を南麻布で過ごした後、2014年の夏にニューヨークに戻りミレニアル世代とジェンZの母親達のワークライフバランスの実現に向けての姿勢と葛藤、また仕事に対する考え方の変化などについて育った環境や人種も異なる母親達に取材をする。

2016年にIT企業やスタートアップをクライアントにもつ米系商業不動産リーシングファーム、ヴァイカスパートナーズに入りオフィス仲介業をする傍ら、商業不動産のランドスケープの変化からミレニアル世代の特徴と働き方への意識の変化を分析。JETRO IPA ニューヨーク主催の「ニューヨークスタートアップエコシステム」の日本セミナーでは、同市スタートアップエコシステムに関わる欧米人6人と共にスピーカーとして参加。その後もオフィス形態やデザイン、オフィス立地の変化などからミレニアル像を分析する講演を行う。2020年に1月にWhitebox CRE Solutionsを設立。イノベーションと空間をテーマに、コワーキングスペースやイノベーションハブのツアー、また商業不動産やプロップテック(プロパティーテクノロジー)の動向について講演や執筆を始める。新型コロナ禍でリモートワークが浸透する中、新たな日常での働き方とワークプレイスについて調査を続けている。現在ニューヨークのブルックリン地区に高校卒業前の息子と愛犬ブルックリン、そして夫と暮らす(長女は大学寮にいる)。

Miki-Hall Motegi Whitebox CRE Solutions

北米最新特集記事

タイ国バンコク都との都市間協力を推進しています。

タイ国バンコク都との都市間協力を推進しています。

横浜市は都市づくりの経験・ノウハウと企業の技術を活用し、新興国等の都市課題解決の支援と企業の海外展開支援を目的とした「横浜の資源・技術を活用した公民連携による国際技術協力(Y-PORT事業)」に取り組んでいます。 本稿では、タイ・バンコク都との都市間連携を特集します。...

ニューヨークの気候テック・イニシアティブ②:ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)のスタートアップ支援

ニューヨークの気候テック・イニシアティブ②:ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)のスタートアップ支援

ニューヨークでは、州全体のクリーンエネルギー推進や気候テックスタートアップ支援において、州によって設立された公益法人ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)が大きな役割を果たしている。また、ボストンで重層的な気候テック支援環境が見られるように、ニューヨークにおいてもNYSERDAだけでな...

ニューヨークの気候テック・イニシアチブ① :ニューヨーク市の気候ソリューションセンター計画

ニューヨークの気候テック・イニシアチブ① :ニューヨーク市の気候ソリューションセンター計画

ニューヨーク市政府は、気候変動の危機に対応するグローバルリーダーとなることを目指し、脱炭素政策に取り組んでいる。ニューヨークの脱炭素に向けた取り組みの中で気候テック・エコシステムにかかる代表的なイニシアチブが、ニューヨーク市マンハッタンに属するガバナーズ島の気候ソリューションセンター(Center...

ボストンの気候テック・エコシステム⑤:気候テック・スタートアップへの重層的な支援

ボストンの気候テック・エコシステム⑤:気候テック・スタートアップへの重層的な支援

前項まで、ボストンの気候テック・エコシステムの主要なハブとして、グリーンタウン・ラボ、MIT、マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターを取り上げてきたが、ボストンを中心にマサチューセッツ州内には、気候テック・スタートアップを支えるまだまだ多くの支援機関やプログラムが存在する。【インキュベータ...

ボストンの気候テックエコシステム④:気候テックの実証促進「マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センター」

ボストンの気候テックエコシステム④:気候テックの実証促進「マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センター」

気候テックの多くは、商用化までに長い年月を要するため、民間投資のみで成長させることが難しく、公的な支援が必要とされている。ボストンの気候テックへの政府系支援で大きな役割を担っているのが、準公的機関であるマサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センター(MassCEC)である。[1]...

市内企業アルケリス株式会社の製品が米国工場に初導入

市内企業アルケリス株式会社の製品が米国工場に初導入

長時間の立ち仕事による足腰の負担を軽減するアシストスーツ「アルケリス」の企画・開発・販売を行う横浜発のスタートアップ企業のアルケリス株式会社が、この度、Hi-Lex Control Inc.社へ「アルケリスFXスティック」を導入されました。

バルセロナで開催された「スマートシティエキスポ世界会議」において、横浜市が脱炭素化に向けた取組や「GREEN×EXPO 2027」を紹介

バルセロナで開催された「スマートシティエキスポ世界会議」において、横浜市が脱炭素化に向けた取組や「GREEN×EXPO 2027」を紹介

11月7日~9日、スペイン・バルセロナ市で世界最大規模のスマートシティに関する国際会議兼展示会「スマートシティエキスポ世界会議」が開催されました。 来場者約2万5千人、800以上の都市、140以上の国・地域が参加し、500名超のスピーカー、1,000を超える出展がありました。

米国ライフサイエンス・ブートキャンプの参加企業を募集します。

米国ライフサイエンス・ブートキャンプの参加企業を募集します。

米国は世界最大のライフサイエンス市場です。近年、米国市場を目指すバイオベンチャーの動きが活発になっている一方で、市場参入戦略やパートナリングなどにおいて、情報ギャップやネットワーク不足に起因する課題が存在します。そこで、世界有数のバイオテッククラスターである米国ボストンのスタートアップ支援機関CIC...