複合開発ハドソンヤードは鉄道操作場(railway yard)上に立ち、2005年のリゾーニングもあり同開発への実現に繋がった。デベロッパーはRelated, Oxford Properties、オフィス棟の55 Hudson Yardsは三井不動産の開発である。その東の10番街を挟んで相向かいの開発、マンハッタンウエストはBrookfieldの開発によるものである。The Real Deal誌によると、Facebookの55 Hudson Yards内オフィスの年間賃料は1平方フィート当たり116.01ドル(1)。
ペンプラザ地域に入りマンハッタンウエストの9番街を挟んで向かいのコリント式建築の外観を持つ4階建てビルは旧郵便局ビルで、ジェームスファーレイ・ビルディング(James Farley Building )という。同ビル1階と地下のモイニハン駅(Moynihan Station)は2021年の1月にオープンし、ペンシルベニア駅と繋がり、ハドソンヤード/ペンプラザ地域へのアクセスは向上した。Facebookはジェームスファーレイビルの2階から4階のオフィスフロア全体を2020年にリースしている。
これら開発が進む以前は、9番街から西は鉄道操作場や配送拠点などが所在するエリアで地下鉄も通っておらず、足を伸ばす人たちは少なかった。しかし地下鉄7ラインがハドソンヤードまで伸び、またハドソンヤード、マンハッタンウエストには自然を取り入れた公共の場やレストランやホテルが建ち、モイニハン駅の天井の一部はガラスが使われ外光が注ぐ。ハイラインがハドソンヤードと繋がり観光客までも訪れる地域と変化した。
8−9番街近辺にテックやクリエイティブを更に呼ぶのはジェームスファーレイビルが大きな役割を果たすと考える。新築の超高層ビルの中で、低層で外装が美しいビルは地域にマンハッタンの歴史を感じさせ新たな個性を加えるであろう。CoStar Dataによるとペンプラザの2020年オフィス平均年間賃料は1平方フィート当たり67.41ドルと西のハドソンヤード地域より下がるものの、今後Amazon、Appleのオフィスオープンが賃料にも影響すると思われる。
(1) Kevin Sun, TRD Insights: This is what office tenants are paying to lease up 55 Hudson Yards, June 17, 2020
ハドソンヤード/ペンプラザに立地する主なテック企業オフィス:
Lyft、LinkedIn、Amazon、Apple、Facebookなど
※記載内容は、2021年3月31日時点の情報。
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【執筆者】
Miki-Hall Motegi / 茂木ホール美紀, Whitebox CRE Solutions, President.
神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1990年にニューヨークに渡る。全日空ニューヨーク支店で北米予算とプロモーションを担当。第二子出産後に、日本政府観光局(JNTO)のニューヨーク支店で国際会議誘致を担当する。夫の仕事の関係で2011年から3年半を南麻布で過ごした後、2014年の夏にニューヨークに戻りミレニアル世代とジェンZの母親達のワークライフバランスの実現に向けての姿勢と葛藤、また仕事に対する考え方の変化などについて育った環境や人種も異なる母親達に取材をする。
2016年にIT企業やスタートアップをクライアントにもつ米系商業不動産リーシングファーム、ヴァイカスパートナーズに入りオフィス仲介業をする傍ら、商業不動産のランドスケープの変化からミレニアル世代の特徴と働き方への意識の変化を分析。JETRO IPA ニューヨーク主催の「ニューヨークスタートアップエコシステム」の日本セミナーでは、同市スタートアップエコシステムに関わる欧米人6人と共にスピーカーとして参加。その後もオフィス形態やデザイン、オフィス立地の変化などからミレニアル像を分析する講演を行う。2020年に1月にWhitebox CRE Solutionsを設立。イノベーションと空間をテーマに、コワーキングスペースやイノベーションハブのツアー、また商業不動産やプロップテック(プロパティーテクノロジー)の動向について講演や執筆を始める。新型コロナ禍でリモートワークが浸透する中、新たな日常での働き方とワークプレイスについて調査を続けている。現在ニューヨークのブルックリン地区に高校卒業前の息子と愛犬ブルックリン、そして夫と暮らす(長女は大学寮にいる)。