地理と交通

五大湖のひとつミシガン湖の西岸に接するミルウォーキー郡は、ウィスコンシン州南東部に位置する郡である(Google Map)。郡都はミルウォーキー市(Milwaukee)。ミルウォーキー市内には、ジェネラル・ミッチェル国際空港(General Mitchell International Airport)などがある。交通手段は主に自動車で、ミルウォーキー郡内の公共交通はバスが中心。旅客鉄道では、イリノイ州シカゴ市などの都市間を結ぶアムトラック(Amtrak)の駅がミルウォーキー市内に2駅ある。また、ミルウォーキー市内には、都市旅客鉄道のライトレール(Light rail)のホップ(the HOP)が運行されている。

統計(人口、産業)

ミルウォーキー郡の人口は952,085人(2017年、米センサス)である。そのうち、ミルウォーキー市はウィスコンシン州内最大の人口(595,351人:2017年、米センサス)で、州都マディソン市(Madison city、255,214人)を大きく上回っている。全米平均と比べて黒人の比率が多い地域(ミルウォーキー郡:27.2%、全米:13.4%)で、白人やアジア系の比率は全米平均より低くなっている。25歳以上にしめる最終学歴が学士卒業以上の割合は30.1%(2013-2017年)で、全米の30.9%とほぼ同じである。平均所得は46,784ドル(2013-2017年)で、全米平均の57,652ドルより低い。

産業別では、医療および社会福祉事業の雇用が全産業合計に占める割合が19.7%で、全米平均より4.1ポイント高いが、それ以外の産業で全米平均から3ポイント以上の違いが見られる産業はない(2016年、米センサス)。

「水クラスター」による地域再生

ミルウォーキー郡をはじめとするウィスコンシン州南東部の地域は、従来、重工業をはじめとする製造業を足がかりとして発展した地域である。1800年代には、豊富な水資源を背景に、ビールやなめし革製品の世界的供給地でもあった。ところが、近年の産業構造の変化、国際競争の激化の中、五大湖周辺の「ラストベルト地帯」の一角として、ミルウォーキー地域も経済的に課題を抱えることになる。そうした中、2000年代はじめごろから、ミルウォーキー周辺地域のリーダーたちが地域経済の再生を掛けて注目したのが、水関連技術を中核とする「水クラスター(water cluster)」の形成であった。主な対象には、バルブ、栓、制御装置、センサー、メーターおよびヒーターなどの装置・機器、水の浄化、汚水処理、吸水、送水および保全サービスなどに必要な技術が含まれる。北米産業分類(North American Industry Classification System:NAICS)コードなど、従来からの産業分類では、こうした技術を用いた製品・サービスは様々な産業に分けられており、「水」産業という分類はない。しかし、ミルウォーキー地域の多くの企業が、「水」関連技術に携わっていることに気づいた地域リーダーや、地域経済開発組織ミルウォーキー7(Milwaukee 7: M7)などが中心となり、「水」産業を地域の重点産業とするコンセンサスを高めていった。今日、ミルウォーキー地域は「水技術のハブ(Water Tech Hub)」として世界的にも認知されるようになっている。

ワシントンDCにある米国を代表するシンクタンク、ブルッキングス研究所(Brookings Institute)のメトロポリタン・ポリシー・プログラム(Metropolitan Policy Program)は2018年7月、「クラスター・イニシアチブの再考(Rethinking Cluster Initiatives)」という報告書を発表、成功事例のひとつとして、ミルウォーキー地域の水クラスターを取り上げている。この報告書は、地域経済の活性化を担う地域のリーダーたちに向けて、経済成長を牽引する産業クラスターを探し出し、うまく活かしていくための助けとなるガイダンスを示したもの。ミルウォーキー地域については、水関連技術産業という高付加価値産業を集積させたことが、地域経済の成長促進につながったと分析している。また、今後も世界的な水技術に対する需要が高まっていくことが予想されることから、ミルウォーキー地域の水クラスター全体の収益は、年間120億ドルから200億ドルに成長すると見込んでいる。

水クラスターの形成で中心的な役割を担ってきたのが、ミルウォーキー市に2009年に設立された非営利団体、ウォーター・カウンシル(The Water Council:TWC)である。TWCは、水関連技術を核とする経済発展を推進し、世界トップクラスの人材を水産業に惹きつけ、水関連技術イノベーション促進を支援することをミッションとしている。そして、大量の水を必要とする様々な産業に向けたソリューションを提供することにより、世界の淡水資源保護に貢献するというさらに大きな目標を掲げている。世界から関係者を集める年次総会「ウォーター・リーダーズ・サミット(Water Leaders Summit)」の開催やアクセラレーター・プログラム「BREW(Business – Research – Entrepreneurship – in Water)」の実施など、様々な取り組みを進めている。

TWCはまた、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校(University of Wisconsin-Milwaukee:UWM)やマーケット大学(Marquette University)といった地元の教育研究機関、ウィスコンシン州経済開発公社(Wisconsin Economic Development Corporation:WEDC)、ミルウォーキー市政府、ミルウォーキー都市圏下水管轄区(Milwaukee Metropolitan Sewerage District)などとの連携にも積極的である。これらの連携を通じて、2010年、UWMに米国内初の淡水科学を専門とする学部スクール・オブ・フレッシュウォーター・サイエンス(School of Freshwater Science)が開設された。さらに、グローバル・ウォーター・センター(Global Water Center:GWC)やグローバル・ウォーター・テクノジー・パーク(Global Water Technology Park)などがミルウォーキー市内に設立され、多くの企業活動や研究の拠点として活用されている。

なお、ウィスコンシン郡に本社を置く主な水技術関連企業には、A. O. Smith、Badger Meter、Rexnord、Rockwell Automationなどがある。

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