北米特集記事

北米スマートシティ:カナダ・ケベック州モントリオール(Montreal, QC)

執筆者 | 2021年3月16日 | 北米スマートシティ, 特集記事

カナダ・ケベック州最大の都市モントリオールでは、市政府が2018年5月にスマートシティイノベーションラボMontreal Urban Innovation Lab(Laboratoire d’innovation urbaine de Montréal)を設立した。21世紀の都市が抱える課題の解決を目指すため、様々な分野から生まれる革新的なソリューション開発を促進・サポートしている(1)。現在進行中のプロジェクトには、自動運転、IoT/5G、オープンデータなどがある。また、カナダ政府主催のスマートシティチャレンジコンペで最優秀賞を得た、市民参加型のコミュニティイノベーションプロジェクトも、モントリオールのスマートシティ化を後押ししている(2)。

モントリオールのスマートシティ戦略から誕生したMontreal Urban Innovation Lab

モントリオール市が2018年5月に発足したMontreal Urban Innovation Labは、同市政府のスマート&デジタルシティ局(Le Bureau de la ville intelligente et numérique〔Smart & Digital City Bureau)が進めるスマートシティ戦略の一環である。その設立に向けた計画の中で、民間企業が新しい公共サービスのベータテストを行ったり、市民が新しいアプリの使い方を学んだりできるイノベーション研究所を設立し、都市部でのイノベーションを促進し、情報格差(デジタルデバイド)を解消することが目標として掲げられた(3)。Montreal Urban Innovation Labは、現在、モントリオール中心部の市役所に隣接した市政マネージャ室(City Manager’s Office)内に設置されている(4)。ここでは、民間企業やその他のパートナー組織、そしてモントリオール市政府に所属する都市イノベーション専門家チームが協働して、モントリオールが抱える都市問題の解決や、市民生活の質の向上につながるような先進ソリューションを開発している。Montreal Urban Innovation Labで現在進められている主なプロジェクト・プログラムには以下が含まれる(5)。

  1. 自動運転車のテスト:自動運転車がモントリオールの交通システムに与える影響や、自動運転車の導入に必要となるインフラ面での変化を分析するために、自動運転シャトルバスの運行テストを実施する(6)。
  2. 市政府による製品・サービスの調達プロセスの革新:市政府の調達プロセスにおける入札手続きのデジタル化などのテストを実施する(7)。
  3. Montréal in Common(後述):貧困層への食糧供給システムの向上や、温室効果ガス排出の削減や交通システムの改善につながるモビリティ関連ソリューションの開発、ソーシャルデータの共有を推進する技術の開発といったコミュニティレベルでのイノベーションプロジェクトを実施する(8)。
  4. MTLWiFi:モントリオール独自のパブリックWi-FiネットワークMTLWiFiを構築し、全て住民に平等で接続が容易な通信ネットワークを提供する(9)。
  5. オープンデータ:都市部の問題解決につながる公共サービスの改善やその透明性の向上のために、市民に公開する市政府関連データの種類を増やす(10)。
  6. 路上駐車問題パイロットプロジェクト:セント・キャサリン通り(Sainte-Catherine Street)の再構築に伴う路上駐車スペース不足の解決に向け、モントリオール市全体のモデルとなるような先進的な駐車管理システムを開発する(11)。
  7. IoT/5G技術のテスト:モントリオールの公共の場で重要インフラや人の動きを監視するセンサーの倫理的・社会的受容性について検討するほか、同市内でのパブリック5Gネットワークの導入に向け、5G Urban Labと称する区画における5Gの実装・運用モデルのテストを行う(12)。

Montreal Urban Innovation Labの専門家チームを率いるディレクターは、オープンガバメントに精通するStéphane Guidoin氏が務めている。また、オープンデータ、通信事業、市民エンゲージメント、経済開発、自動運転車、戦略的コンテンツなど、各分野の専門家がイノベーション顧問として参加している(13)。

 

カナダ連邦政府のスマートシティコンペを勝ち抜いたコミュニティイノベーションプロジェクトMontréal in Common

Montreal Urban Innovation Labのプロジェクトのうち、Montréal in Commonで進められている計13のプロジェクトは、カナダ連邦政府社会資本省(Infrastructure Canada)が開催した地方自治体向けスマートシティ課題解決プロジェクトコンペ「Smart City Challenge」で、モントリオール市政府が2019年5月に最優秀賞を受賞した提案に基づくものである(14)。同市政府は同コンペで獲得した賞金5,000万カナダドルを活用して、パートナー組織と共に関連技術の開発やテストを行っている(15)。

例えば、統合ローカル食糧分配システム(Integrated Local Food System)開発プロジェクトでは、モントリオールに拠点を置くサステイナブルな食糧エコシステム構築サービス事業者Récolteと提携し、貧困層に地元産のヘルシーな食糧を分配するネットワークの構築を目指している。具体的には、地元農家に近い場所に新鮮な野菜や果物といった食糧を保管、加工・調理、分配するための物流センターとトラックを配置するフィージビリティ調査が行われており、分配システムのデジタル化にも焦点が置かれている(16)。

また、ソーシャルデータハブ(Social Data Hub)開発プロジェクトでは、モントリオール学際研究センター(Centre for Interdisciplinary Research on Montreal:CIRM)とモントリオール市多様性・社会的包摂課(Service de la diversité et inclusion sociale)が、モントリオール住民に特化した地域の問題を明確にするための安全な情報交換プラットフォームを共同開発している。例えば、日常生活に必要な最低限の食糧が確保できない貧困層の多い地域など、社会問題が起きている地域を特定し、先進的な解決方法を住民に伝えるためのデータ管理モデルのテストが行われている(17)。

さらに、モビリティ関連では、統合モビリティ(Integrated Mobility)プロジェクトとして、モントリオール都市圏運輸局(Autorité régionale de transport métropolitain:ARTM)と提携し、モントリオール都市圏の公共交通機関、タクシー、自動車ライドシェアサービス、シェアサイクルサービス、駐車場といったサービスが容易に利用できる一元的なプラットフォームを開発している。また、ネイバーフッドモビリティ(Neighbourhood Mobility)プロジェクトでは、住みやすい環境の構築を推進する非営利団体Solonの協力の下、モントリオールを走る1人乗りの車を減らし、温室効果ガス排出を抑制するために、シェアサイクルや荷物用トレイラー付きシェアサイクルといった代替車両を利用するよう市民に働きかけている。ラ・プティット=パトリ(La-Petite-Patrie)地区で実施されている実証実験では、市民がシステム上のエラーの報告や改善点について意見交換できるインタラクティブなオンラインプラットフォームも試されている。2021年2月時点で、同地区のシェアサイクル利用者は合計約800人に達しており、共有できる車両の数も50台にまで拡大している(18)。

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