5Gイノベーション:州・都市の挑戦

北米では第5世代移動通信システム(5G)実用化の促進に伴い、その市場規模も拡大傾向にある。2020年に入り、グローバルパンデミックの影響で数多くの人々がリモートワークを余儀なくされるなか、ネットワーク接続性の重要さが再認識され、5Gの必要性も急速に高まりつつある。調査会社Grand View Researchによると、世界5Gサービスの市場規模は、2020年に414億8,000万ドルに到達した後、2021年から2027年にかけ年平均成長率43.9%で推移し、4,145億ドルまで拡大する見込みである。2020年の地域別市場規模では、北米が34.3%を占め、他の地域を圧倒するとみられる。米国における市場成長の牽引役として期待されているのが、M2M(マシーン・ツー・マシーン)通信のほか、エネルギー・公益事業管理やスマートモビリティといったスマートシティ関連分野における、高速データ通信の需要拡大とみられている(1)。

こうした中、米国やカナダでは、州政府や自治体、州立大学などがリードして、地域経済開発などを目的として、5G関連技術の実証証実験が各地で進められている。すでに実績のある大規模実証実験施設に5Gを導入し、既存のエコシステムを最大限に活用する取り組みから、都市空間のリビングラボとなる地域を設置したり、開発プラットフォームを立ち上げたりといった、全く新たなイニシアチブへの着手まで多様である(2)。

北米で実施されている5G関連実証証実験の例
北米5Gイノベージョンマップ

 

プロジェクト ロケーション 概要
Mcity ミシガン大学(州立大学)

ミシガン大学が2015年に設立した世界初の自動運転車試験施設Mcityでは、電気通信大手Verizonの5Gを利用して、自動運転自動車の実用化に向け、様々な5Gソリューションの実証試験を進めている。

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Curiosity Lab ジョージア州ピーチツリー・コーナーズ市(米国)

ピーチツリー・コーナーズ市が開設したスマートシティ・モビリティ技術開発ラボCuriosity Labでは、電気通信大手Sprintの5Gを活用し、スマートシティ環境のなかで、スマート外灯、eスクーター、自動運転自動車、自動運転芝刈り機、ドローンなどのテストを行う計画が進められている。

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DIA Smart Cities Living Lab テキサス州ダラス市(米国)

ダラス市政府を中心とする官民パートナーシップDallas Innovation Alliance(DIA)は、電気通信大手AT&Tと提携し、ダラスのダウンタウン4区画を5Gや先進センサーなどを活用してスマートシティ化するDIA Smart Cities Living Labを展開している。

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ENCQOR 5G ケベック州・オンタリオ州(カナダ)

ケベック州政府、オンタリオ州政府、EricssonやIBMなどが参加する官民パートナーシップENCQOR 5Gでは、カナダ初の5G開発向け試験用プラットフォームが運用されている。中小企業による5G対応の新製品やサービスのプロトタイプ開発が進められている。

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Las Vegas Smart City project ネバダ州ラスベガス市(米国)

ネバダ州ラスベガスでは、市政府が2019年9月にダウンタウンに開設したスマートシティ関企業のテクノロジーハブInternational Innovation Centerが中心となって、プライベート5Gをベースとしたスマートシティ計画を進めている。

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5G Zone インディアナ州インディアナポリス市(米国)

インディアナポリス市政府がダウンタウンに2019年8月に開設した5G Zoneでは、VerizonとAT&Tの両方の5Gを活用し、新技術や製品、サービスアプリケーションなどのテストを行うスペースが提供されている。

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本特集では、各地で地域のヒト・モノ・カネといったリソースを結集し、世界的な5Gイノベーションの牽引役を目指そうとする様々な取り組みについて紹介していく。