北米特集記事

5Gイノベーション: インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis, IN)

執筆者 | 2021年1月15日 | 特集記事, 5Gイノベーション

インディアナ州の州都インディアナポリス市のダウンタウンでは2019年8月、産学界連携による5G通信を活用した技術テストや研究を行うIndiana 5G Zoneを開設すると発表した。同施設は、インディアナ州に拠点を置く一般企業、スタートアップ企業、大学、研究所らが集って5G通信で実現する先進技術を共同開発し、お互いのノウハウを共有するコラボレーションの場であり、2020年12月末に開設となった。同施設での研究対象は先進製造業やデジタル農業、スマートシティ分野での5G技術の応用であり、セキュリティや可視化ソリューションを活用した5Gソリューションの迅速な開発が期待されている。

インディアナポリスに5G人材を集結させるIndiana 5G Zone

Indiana 5G Zoneは、インディアナポリスダウンタウンに所在する市役所から徒歩約8分の距離にあるテクノロジー専門学校Eleven Fifty Academyの施設内に設置されている。Eleven Fifty Academyは、インディアナ州のIT人材ギャップを埋めることを目的としており、コーディングやサイバーセキュリティなどの基礎コースを提供している(1)。Eleven Fifty Academyの敷地面積2万4,000平方フィート(約2,230平方メートル)のうち、Indiana 5G Zoneは3,000平方フィート(約279平方メートル)を占め、実証試験ラボとイベント・ネットワーキングスペースで構成されている(2)。Indiana 5G Zoneは、インディアナポリスに拠点を置く分野横断的コラボレーションネットワークを推進するプログラム開発非営利団体NineTwelveを主幹組織とし、主要な産業パートナーとして通信大手AT&TVerizon、カリフォルニア州オークランドのデータ保護プラットフォーム開発企業XQ Messageの3社、学界パートナーとして5Gテストベッドの運営を担当するインディアナ州の公立総合大学Purdue University工学部、そしてスポンサーとしてインディアナ州政府が支援している(3)。

Indiana 5G Zoneの利用料金は年会費制となっており、一般企業(6,000ドル)、政府機関・教育機関(3,500ドル)、スタートアップ企業(1,000ドル)、一般人・学生(600ドル)まで幅広い層が利用対象となっている。会員には、実証試験ラボとコワーキングスペースへのアクセス以外にも、ピッチコンペティション、起業サポート、研究プレゼンテーション、産業リーダーとのチャット、ハッカソンといった各種イベントへのアクセスが提供される(4)。Indiana 5G Zoneの建設費および運営費は、インディアナ経済開発公社(Indiana Economic Development Corporation:IEDC)から二年間最大292万ドルが支給され、そのうち193万ドルは民間セクターとのマッチングファンド方式となっており、これは主に施設の利用料金で賄われる予定である。民間負担が満たされた場合の予算は、二年間で485万ドルとなる(5)。

セキュリティや可視化ソリューションで開発環境を強化、Indiana 5G Zoneが満を持してオープン

グローバルパンデミックの影響により世界各地で5G導入プロジェクトの進行にも支障が出ているなか、Indiana 5G Zoneの主幹組織NineTwelveは2020年12月29日、Indiana 5G Zoneの正式な開設を発表した。発表によると同施設で利用できる5G通信の周波数はミリ波帯で、ダウンロード速度は1Gbps以上となっている。Indiana 5G Zoneが当初サポートする研究プログラムは、①先進製造業、②デジタル農業、③スマートシティとなっている。先進製造業プログラムでは、5G通信を活用した製造施設の安全性と信頼性の向上、デジタル農業プログラムでは5G通信による農業機械・システムのコネクティビティ・信頼性・耐久性の向上、スマートシティプログラムは5G通信によるスマートな信号・ゴミ取集箱、デジタル公共サービス対応アプリの性能強化などが図られる(6)。将来的には、エネルギー関連施設や軍事施設といった国家安全保障に係る重要な分野での5Gアプリ―ケーションの開発もサポートされる予定である(7)。

またIndiana 5G Zoneでは、このグランドオープニングを前に、産業パートナーとの連携により、5G導入を促進させるセキュリティソリューションや可視化ソリューションを相次いで発表している。例えば、2020年11月10日には、産業パートナーXQ Messageが開発した量子セーフXQメッセージプラットフォーム(Quantum-safe XQ Message platform)の実証導入の成功を発表している。これは、量子セーフ暗号化により、既存のデータ漏えいや将来の量子コンピューティング攻撃からデータを安全に保つための技術であり、Indiana 5G Zoneは今後、サービスとしての量子セーフ暗号化(Quantum-safe Encryption as a Service :QEaaS)を、米国内の商用および教育機関用5Gネットワークに提供する予定である。Indiana 5G ZoneがXQ Messageのプラットフォームを選定した理由には、幅広い量子セーフアルゴリズムをサポートできることや、QEaaSに必要となるトラッキングと課金機能が搭載されたダッシュボードがあることが挙げられる(8)。さらに、Indiana 5G Zoneは同月20日に、バージニア州アーリントンに拠点を置くソフトウェア開発企業Edge Technologiesが開発した、様々な技術、アプリケーションを安全に統合、視覚化することで、Indiana 5G Zoneの産学界メンバーによる5Gイノベーションの導入にかかる時間を短縮させるデジタル・トランスフォーメーション・ソリューション「edgeCore」を発表した。同施設の主要研究分野である先進製造業、デジタル農業、スマートシティ関連の5Gソリューションのテストやプロトタイプ作成において、その成果を可視化し、既存のシステムと統合して価値を測ることで実用化が早まると期待されている(9)。

参考記事(アクセス:2021年1月4日)

北米最新特集記事

コロンビア大学(Columbia University):後編

コロンビア大学(Columbia University):後編

コロンビア大学は、学内でのイノベーションエコシステム構築に加え、自治体や同じくニューヨーク市に拠点を構える多くの大学と連携した取り組みにも加わっている。そこで後編では、コロンビア大学も含め、ニューヨーク市に数多く集まる大学間の連携を核とするイニシアチブとして特徴的なNYC Media...

コロンビア大学(Columbia University):後編

コロンビア大学(Columbia University):前編

コロンビア大学(Columbia University)は、米国最大都市ニューヨークのマンハッタン中心部にある大学で、国内外の多様なバックグラウンドを持つ学生や教員が大都市の豊富なリソースを活かし、研究や教育に取り組んでいる(1)。US...

マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)後編

マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)後編

MITは、前編で述べたように、充実したイノベーションエコシステムでスタートアップ企業や起業家を支援しているほか、そのエコシステムを活かし、地域や世界の課題に解決する取り組みにもつなげようとしている。以下、世界各国におけるイノベーションエコシステム構築をサポートするため、MITのノウハウを展開しようと...

カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley:UCB)後編

カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley:UCB)後編

UCBでは前編で見てきたような、アクセラレーターやインキュベーター等の学内リソースを活用したスタートアップ支援に加え、シリコンバレーに集まる企業や組織との連携を通じて、同大学で誕生する新たなアイディアや技術を、社会にいち早く展開できるような支援体制も用意されている。後編では、こうした地域ステークホル...