ジョージア州アトランタ郊外に位置するピーチツリー・コーナーズ市(Peachtree Corners)政府は2019年9月、公的資金ベースのスマートシティ・モビリティ技術開発ラボCuriosity Labを開設した。このラボは、大手通信事業者Sprintの5Gネットワークを活用し、スマートシティ環境のなかで、自動運転式電動キックボード、自動運転車、スマート宅配ドローンなどの運用テストが行われる予定である。

5GベースのスマートシティテストサイトCuriosity Labの概観とパートナー

ピーチツリー・コーナーズ市が設立したCuriosity Labは、同市内にある面積500エーカーのテクノロジーパークTechnology Park Atlanta内にある。Technology Park Atlantaは、ピーチツリー・コーナーズ市のコミュニティに、IT企業の誘致とジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)卒業生の雇用機会創出を目的に1968年に作られたもので(1)、現在はIT関連プロフェッショナルが7,500人雇用されており、1,000人以上が在住している(2)。また、ピーチツリー・コーナーズ市の北西に位置するアトランタは、米国南西部で最大・最先端のテクノロジーハブと言われており、スマートシティ、モビリティ、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)といった先進技術の開発で注目地域のひとつになっている(3)。

Curiosity Labは、自動運転自動車及びスマートシティ技術の研究拠点を目指している。主な施設には、イノベーションセンターのほか、Sprintのミッドバンド5Gネットワークでカバーされた全長1.5マイル(約2.4キロメートル)のテスト用道路(4)、スマートポール(電柱)・スマート信号、DSRC(Dedicated Short-Range Communications:狭域通信)ユニットで構成されている(5)。テスト用道路は、Technology Park Atlantaに隣接するテクノロジーパークウェイ(Technology Parkway)沿いに位置し、ピーチツリー・パークウェイ(Peachtree Parkway)とスポールディング・ドライブ(Spaulding Drive)までの既存道路に統合される形で活用されている。テスト用道路には、30以上の一般道路が交差しており(6)、ピーチツリー・コーナーズ市役所からも約1マイル(約1.6キロ)の距離にある。

Curiosity Labは、テクノロジー関連企業であれば起業間もないスタートアップからフォーチュン500にランクする大企業まで規模を問わずに利用申請が可能であり、利用は無料となっている。テスト用道路、歩道、通行権(right-of-way)は、ピーチツリー・コーナーズ市が100%所有しており、実際に人が生活しているTechnology Park Atlantaという実環境内で、様々な5Gベースのスマートシティ技術をテストできることを売りにしている(7)。対象施設・設備の全てを市が所有しているため、利用を希望する企業の承認申請もスムーズになるメリットがある。なお、Curiosity Labは、テスト施設の利用は無料としながらも、その運営のために参加企業にはスポンサーとなることを推奨している。スポンサー企業の特典としては、イノベーションセンター内で利用できる企業のロゴ付き専用オフィスや技術セミナーを主催する権利の供与、Curiosity Labインキュベーターとしてスタートアップコミュニティと交流する機会の提供などが含まれている(8)。

2万5,000平方フィート(約2,323平方メートル)あるイノベーションセンターでは、テスト用道路を利用するテクノロジー企業やスタートアップ企業、一般企業のテクノロジーチームなどが、ネットワーキングを図るためのエコシステムハブとしての役割を担っている(9)。同センターには、上述のスポンサー企業の専用オフィスの他にも、インキュベーション施設、スタートアップ企業のオフィス、会議室、プロトタイプ設計室、教室(座席数50席)、ポッドキャスト用スタジオ、特別イベントスペース、ネットワーク運用センター、電気自動車(EV)充電所などが設置されている(10)。また、同センター内のインキュベーターであるPrototype Primeは、ピーチツリー・コーナーズ市政府が2016年10月、ジョージア工科大学先端技術開発センター(Advanced Technology Development Center:ATDC)の協力を得て、市の財源で設立した組織である(11)。

そのほか、Curiosity Labのエコシステムを支えるパートナーとして、5Gネットワークを提供するSprintの他にも、ネットワーク機器大手Cisco Systems、電力会社Georgia Power、通信事業者Hargray Communications、サイバーセキュリティソフトウェア開発企業Cyber 2.0などの民間企業や、米国冷暖房空調学会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers:ASHRAE)、アトランタ都市圏商工会議所(Metro Atlanta Chamber of Commerce)、台米産業協力推進オフィス(Taiwan-USA Industrial Cooperation Promotion Office:TUSA)、ジョージア州の自動車メーカー業界団体(Georgia Automotive Manufacturers Association:GAMA)といった業界団体、ジョージア工科大学、ポール・デュークSTEM高等学校(Paul Duke STEM High School)などの教育機関が参加している。

Curiosity Labの設立にあたっては、ピーチツリー・コーナーズ市政府の他に、パートナーであるGAMA、Sprint、ジョージア工科大学が併せて約500万ドルを投じた(12)。ピーチツリー・コーナーズ市政府はCuriosity Lab の管理運営業務のため、シティマネージャ(City Manager)や道路整備員(Public Works)といった常勤職員を増員するといった対応もとっている(13)。

 

Curiosity Labで実用化が目指される先進技術と業界パートナーシップの事例

ピーチツリー・コーナーズ市は2019年9月11日、Curiosity Labの開設イベントの場で、Sprintの5Gネットワークをベースにテスト運用が予定されるパートナー企業の先進技術・製品を紹介した(14)。その概要と、ピーチツリー・コーナーズの住民が実際に利用できるテスト運用の段階に達した事例の運用開始日は以下の通りである。

パートナー企業 技術・製品概要 運用開始日
Local Motors 世界初の電動自動運転型小型シャトルバスColli 2019年10月1日(15)
Valqari 航空エンジニアリング会社Autonodyne(autonodyne.com/)の無人飛行ソフトウェアを搭載したスマート宅配ドローン
Tortoise モバイルアプリを介してユーザの居場所まで自動運転で移動する電動キックボードGo X Apollo 2020年5月20日(16)
CloudMinds Technologies ソフトバンクロボティクス(softbankrobotics.com)が開発した世界初の感情認識ヒューマノイドロボットPepperをベースに、デジタルアバターCloudiaを組み合わせ、カリフォルニア州アーバインのソフトウェア会社CloudMinds Technologiesが完成させたクラウドAIサービスロボットCloud Pepper
Kia Motors 自動運転機能と拡張現実エクスペリエンスを提供するコンセプトカーHabaNiro及び自動運転機能を搭載したミッドサイズSUVのTulluride
Mercedes-Benz 自然対話式音声認識や、各機能の使用履歴から音楽や目的地を運転手に提案する機能など、ユーザエクスペリエンスを向上させる様々な機能を搭載した車載システムMercedes-Benz User Experience(MBUX)
REEF Technology 宅配専用スマートキッチンソリューション
Greenzie (greenzie.com/) 芝刈り機用の自動運転ソフトウェア・センサキット(2018年以降に発売された多くの機種に対応(17)

 

Curiosity Labでは、こうした民間企業との連携に加え、業界団体とのパートナーシップにも注力している。2019年10月8日には、建築システム設計及び産業プロセス工学専門家の会員を世界132カ国に5万7,000人以上有する米国冷暖房空調学会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers:ASHRAE)と、スマートシティ関連技術のイノベーション創出に向け戦略的提携を締結すると発表した。ASHRAEは、その世界本社をジョージア州アトランタから、Curiosity Labが所在するピーチツリー・コーナーズに移転する予定であり、持続性のあるエネルギー関連技術の開発でCuriosity Labとの密接な連携に期待を寄せている(18)。またCuriosity Labは同年11月11日、台米産業協力推進オフィス(Taiwan-USA Industrial Cooperation Promotion Office:TUSA)とも、スマートシティ及びインテリジェントなモビリティ技術の共同開発で提携すると発表した。台湾経済部(The Ministry of Economic Affairs:MOEA)に属するTUSAは、台湾と米国の産業間の協力と投資の促進を使命としており、Curiosity Labのテスト施設を台湾スタートアップ企業による米国事業展開への足掛かりになるものと期待している(19)。

こういったピーチツリー・コーナーズ市政府による米国内外でのスマートシティ技術開発推進に向けた様々な取り組みが評価され、Curiosity Labは2020年3月9日、米市場調査会社IDCが主催する北米スマートシティアワード(IDC Smart Cities North America Awards:SCNAA)の運輸部門(コネクテッドカー・自動運転車)を受賞している(20)。

参考記事(アクセス:2020年8月31日)

 参考統計(ジョージア州ピーチツリー・コーナーズ)

ジョージア州ピーチツリー・コーナーズ参考統計 

出典(アクセス:2020年8月31日)

  1. https://www.bizjournals.com/atlanta/feature/dated-tech-park-will-transform-into-tech-hub.html 
  2. https://www.curiositylabptc.com/about/
  3. https://www.peachtreecornersga.gov/Home/Components/News/News/1893/
  4. https://www.lightreading.com/iot/iot-strategies/sprint-peachtree-corners-et-al-to-launch-5g-iot-lab-in-georgia/d/d-id/754065 (2019年9月10日付け報道)
  5. https://www.curiositylabptc.com/testing/
  6. https://www.curiositylabptc.com/faq/
  7. https://www.curiositylabptc.com/
  8. https://www.curiositylabptc.com/partners/
  9. https://www.curiositylabptc.com/facilities/
  10. https://www.curiositylabptc.com/faq/
  11. https://www.bizjournals.com/atlanta/feature/dated-tech-park-will-transform-into-tech-hub.html
  12. https://www.govtech.com/fs/transportation/New-Autonomous-Vehicle-Test-Track-to-Open-in-Metro-Atlanta.html
  13. https://www.peachtreecornersga.gov/Home/ShowDocument?id=7728
  14. https://www.curiositylabptc.com/curiosity-lab-ribbon-cutting-americas-first-5g-powered-smart-city-tech-proving-ground-to-awaken-cloud-robots-autonomous-vehicles-and-more/
  15. https://www.curiositylabptc.com/curiosity-lab-at-peachtree-corners-collaborates-with-local-motors-to-deploy-olli-the-worlds-first-co-created-autonomous-electric-shuttle/
  16. https://www.curiositylabptc.com/tortoise-go-x-launch-worlds-first-shared-e-scooters-with-teleoperated-repositioning-at-curiosity-lab-at-peachtree-corners/
  17. https://www.greenzie.com/product
  18. https://www.curiositylabptc.com/curiosity-lab-partnership-with-ashrae-to-support-smart-city-technology-and-sustainable-energy-innovation/
  19. https://www.curiositylabptc.com/curiosity-lab-at-peachtree-corners-and-tusa-partner-to-foster-international-smart-city-and-intelligent-mobility-technology-innovation/
  20. https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS46115120