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ボストンの気候テックエコシステム④:気候テックの実証促進「マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センター」

執筆者 | 2023年1月19日

気候テックの多くは、商用化までに長い年月を要するため、民間投資のみで成長させることが難しく、公的な支援が必要とされている。ボストンの気候テックへの政府系支援で大きな役割を担っているのが、準公的機関であるマサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センター(MassCEC)である。[1]

  • マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターは、クリーン・エネルギー・セクターの成長のために2009年にマサチューセッツ州(州法)によって設立された経済開発機関である。[2]
  • 同州(州法)によって設立された再生可能エネルギー信託基金を主な財源としている。[3]
  • マサチューセッツ州再生可能エネルギー信託基金は、州内の電力会社の顧客と自治体の電力部門が支払う1キロワット時あたり0005 ドルの給付料金によって運営されており、州の平均的な世帯は毎月29セントを同基金に寄付していることになる。[4] 

マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターのスタートアップ支援

マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターは、様々なプログラムを通して気候テック・スタートアップを支援している。起業家は成長ステージの各段階で資金調達を必要とするが、マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターは、特に、アイデア・研究段階と商業化段階との間の資金ギャップを埋める役割を果たしている。

  • 設立10年間で、900社以上を支援、3億6千万ドル以上を拠出した。[5]
  • これらのプログラムに対し、民間及び連邦政府から20億ドル以上の資本投下を呼び込んだ。[6]
  • 現在、アーリー・ステージの企業や技術開発への助成・投資、建物や輸送の脱炭素化パイロット事業、クリーン・エネルギー分野の人材育成研修などのプログラムを実施している。

(グリーンタウン・ラボとの関係性)

  • グリーンタウン・ラボ・メンバー/卒業企業のうち、少なくとも40社以上が、下記のプログラムを含め、マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターの助成金や投資などの支援を受けたことがある。[7]
  • マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターのポートフォリオ企業43社うち、12社がグリーンタウン・ラボ・メンバー/卒業企業である。[8]

【マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターによる主な資金提供機会】

プログラム名 概要

カタリスト

(Catalyst)

  • プロトタイプ製作段階にある企業向けの最大7万5千ドルの助成金。[9]
  • 最終選考に残った応募者はピッチ指導やメンタリングを受ける。[10]
  • マスベンチャーズとの連携で運営。マスベンチャーズは、アーリー・ステージの技術系スタートアップの資本ギャップを埋めるため、1978年にマサチューセッツ州によって設立された準公的企業。[11]
  • 2010年に始まったカタリストは、これまで111社に600万ドルを授与し、支援スタートアップへの2億ドル以上の民間投資を誘発している。[12]

アンプリファイマス

(AmplifyMass)

  • 商業化を目的とした学術機関やスタートアップを対象とした助成金。[13]
  • 併せて連邦政府などの主要な助成金とセットで資金獲得を目指す応募者には最大30万ドル、本プログラム単独での資金獲得が目的の場合は最大10万ドルが支援される。[14]

イノベートマス

(InnovateMass)

  • 商業化の可能性が高いスタートアップへの最大25万ドルの助成金。[15]
  • エンジェル投資家による初期段階の支援と、VCや戦略的投資家による後期段階の支援の間に存在する「死の谷」と呼ばれる資金格差に直面している企業に対して、戦略的支援を行うよう設計されている。[16]
  • MassVenturesが技術コンサルタントとして参画し、受賞者へのメンタリングなどを通して成功の確度を上げる支援を行う。[17]

2030ファンド

(2030 Fund)

  • シード/アーリー・ステージの気候テック・スタートアップを対象とした5000万ドルの投資ファンド。[18]
  • これまで43社に合計2300万ドル以上の投資を実行し、567名の雇用を支え、10億ドル以上の民間投資を誘発している。[19]

【MassCEC投資企業のうち、グリーンタウン・ラボ・メンバー/卒業企業】

企業名 開発技術、製品
AeroShield シリカエアロゲルの技術を応用した超断熱ガラス
Alkemy Environmental 産業廃棄物を持続可能な軽量コンクリート骨材にリサイクル
Blackburn Energy トラック車両のドライブシャフトが回転する力を電気に変換
Electra 電気化学を用いた超低温での製鉄
Loci Controls 埋立地でメタンガス回収を最適化するクラウド型プラットフォーム
Pecos Wind Power 分散型発電用の風力発電
Sistine Solar ソーラーパネルへのロゴデザインなどを可能とするオーバーレイ
Sunwealth 商業用太陽光発電への投資会社
Adept Materials 建物のエネルギー効率を高める多機能建設資材
Tessolar ソーラーパネルの設置簡易化
Titan Advanced Energy Solutions 超音波技術によるリチウムイオン電池の高性能・長寿命化
Transaera 新しい乾燥剤材料を用いた超効率の空調システム

インキュベーター・アクセラレーター支援

マサチューセッツ・クリーン・エネルギー・センターが支援するのはスタートアップだけではない。マサチューセッツ州内の気候テック・スタートアップの育成を目的とした、アクセラレーターやインキュベーターに対しても助成金による支援を行っている。

【MassCECのインキュベーター・アクセラレーター支援プログラム】

プログラム名 概要 受賞者

インキュベートマス

(IncubateMass)

  • 2013年に始まった州内の気候テック育成に貢献するインキュベーターを対象とした助成金。[20]
  • 年間最大17万5千ドルの助成金は、施設やインフラの構築 、設備購入 、ネットワーキング・イベントやワークショップ、インキュベーター・スタッフの専門能力開発などに活用される。[21]
  • 2022年までに、支援先のインキュベーターによって、500社以上のスタートアップが支援され11,000以上の雇用に貢献している。[22]

2022年度は、

に授与された。[23]

アクセラレーター・ファンディング・プログラム

(Accelerator Funding Program)

  • 2019年に始まった気候テック育成に貢献するアクセラレーターを対象とした助成金。[24]
  • 年間最大12万ドルの助成金は、運営管理、イベントや教育、賞品、スタートアップへの奨学金などに活用される。[25]
  • 2022年までに、支援先のアクセラレーターによって、200社以上のスタートアップが支援され、39,000以上の雇用に貢献している。[26]

2022年度は、

に授与された。[27]

 

 

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