地理と交通

ニューヨーク郡は、ニューヨーク州南東部のハドソン川(Hudson River)、イースト川(East  River)、ハーレム川(Harlem River)に囲まれたマンハッタン島(Manhattan Island)とその周辺の小島、およびハーレム川を超えて本土側にあるマーブル・ヒル(Marble Hill)が含まれる(Google Map)。ニューヨーク州の州都ニューヨーク市には5つの行政区間があり、そのひとつ「マンハッタン区(Manhattan Borough)」がニューヨーク郡と同じ区域になっている。なお、米国の地方行政区分は州の下に郡、郡の下に基礎自治体とすることが一般的で、ニューヨーク州も概ねこの区分に沿っているが、ニューヨーク市は例外的で、郡に相当する行政区が、ニューヨーク市の下位に位置づけられている。

最寄りの国際空港には、ニューヨーク州ロングアイランドにあるジョン・F・ケネディ国際空港(John F. Kennedy International Airport)およびラガーディア空港(LaGuardia Airport)と、ニュージャージー州のニューアーク・リバティ国際空港(Newark Liberty International Airport)がある。マンハッタンは公共交通機関が便利であり、生活に欠かせないものになっている。全米で自動車を所有していない世帯の割合は1割に満たないが、マンハッタンに住む世帯では約8割が自動車を1台も所有していないほど(米センサス、2011-2015 American Community Survey)。マンハッタンの公共交通としては、メトロポリタン交通局(Metropolitan Transportation Authority:MTA)が運行する地下鉄やバス路線がニューヨーク市内に張り巡らされている。その他、近隣の郡や州からの通勤鉄道として、ロングアイランド鉄道(Long Island Rail Road:LIRR)、メトロノース鉄道(Metro-North Railroad)、ニュージャージー・トランジット(New Jersey Transit:NJ Transit)、パストレイン(Port Authority Trans-Hudson:PATH)がある 。また、Amtrakは、ボストン‐ニューヨークー‐ワシントンDC間を結ぶ高速鉄道アセラ・エクスプレス(Acela Express)など、複数の都市間鉄道路線でニューヨークを経由させる形で運行している。

 

統計(人口、産業)

ニューヨーク郡の人口は1,664,727人(2017年、米センサス)で、人口に占める白人の比率は64.4%で全米平均より10ポイント以上低い(全米:76.6%)。一方、アジア系は13.0%で全米平均よりかなり高くなっている(全米:5.8%)。25歳以上にしめる最終学歴が学士卒業以上の割合は60.7%(2013-2017年)で、全米の30.9%を30ポイント近く上回っている。平均所得は79,781ドル(2013-2017年)で、全米平均の57,652ドルの約1.4倍と比較的所得の高い地域となっている。 産業別では、専門的・科学的・技術的サービス業、金融及び保険業、情報産業における雇用数の全産業合計に占める割合が、全米平均と比べかなり高い(2016年、米センサス)。

産業別雇用数 ニューヨーク州ニューヨーク郡 2016年

マンハッタン島の最南端に位置するロウワー・マンハッタン(Lower Manhattan)のウォールストリート(Wall Street)は世界の金融の中心とよばれ、ニューヨーク証券取引所(New York Stock Exchange:NYSE)やナスダック(NASDAQ)が置かれている 。Fortune 500の上位にランクインする金融大手J.P. Morgan Chase、Citigroup、Morgan Stanley、Goldman Sachs Groupなどの本社もマンハッタンにある。

 

ニューヨークIT産業のイノベーションエコシステム

ニューヨーク市は金融だけでなく、米国を代表するハイテク・クラスターとしてのプレゼンスも非常に高い。全米商工会議所(US Chamber of Commerce)らによる新興企業ビジネス支援環境ランキング「イノベーション・ザット・マターズ(Innovation that Matters)」の2017年版で全米トップ10に入っている。また、Analytics Insightによる世界の人工知能ハブ6地域にもニューヨーク‐ボストン地域が挙げられている 。マンハッタンから周辺地域に広がるIT産業クラスターは、西海岸のシリコン・バレーに対抗してシリコン・アレー(Silicon Alley)と呼ばれることもある。

ニューヨーク市はIT大手の活動拠点としても成長しており、New York Timesによると、Googleが約7,000人(半分以上はエンジニアやテクノロジー関連スタッフ)、Amazon.comとFacebookは2,000人以上を雇用しているほか、IBMでは、ワトソンの人工知能(artificial intelligence:AI)・クラウドコンピューティング部門の本社をニューヨークに置いているという(2018年11月14日付) 。これらの他にも、Microsoft、Apple、Twitter、VerizonといったIT大手もオフィスを構えている。また、Warby Parker、Blue Apron、OscarHealthといったニューヨーク市出身のローカルIT企業も台頭しており、これらの企業の時価総額は10億ドル以上にのぼるという。

一方で、ニューヨークは銀行、小売業、広告、コンサルティングサービスといったサービス産業が盛んであるが、これらのセクターでもIT関連雇用を増加させる傾向が強まっている。例えば、Goldman Sachsではデータアナリスト、アプリケーションデベロッパ、デジタルセキュリティ・ブロックチェーン専門家といったテクノロジー関連従業員約2,000人をニューヨークに配置している 。また、ニューヨークに拠点を構えるJPMorgan Chaseでは2018年5月、カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)の機械学習部門のトップであるヌエラ・ヴェローゾ(Manuela Veloso)教授をAI研究チームのリーダーとして迎えいれた 。

さらに、ニューヨーク市政府では、ニューヨーク市IT通信局(New York City Department of Information Technology & Telecommunications:DoITT)を通じて、同市におけるITサービス・インフラを強化する取り組みを進めている 。DoITTのイニシアチブには、無料Wi-FiネットワークのリンクNYC(LinkNYC)や、ニューヨーク市政府関連データの公共ポータルであるNYCオープンデータポータル(NYC Open Data Portal)などがある。

 

ライフサイエンス・ハブ

ライフサイエンス分野でも注目の地域となっている。遺伝子工学・バイオテクノロジー関連ニュースメディアGENによる2018年全米バイオ医療クラスターランキング でニューヨーク‐ニュージャージ地域は3位に入った。

ニューヨーク市は全米で最大のバイオサイエンス関連労働力を有しているほか、国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)からの研究助成金受給額は、全米で2番目に多い年間約18億ドルとされる。また、コロンビア大学(Columbia University)、ワイルコーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)、ニューヨーク大学(New York University:NYU)、ロックフェラー大学(The Rockefeller University)をはじめとする9つの大型大学病院の拠点であり、世界で最も学術機関が集中している都市とされている 。

ライフサイエンス関連のイニシアチブとしては、総額5億ドルを10種類のライフサイエンス関連の人材育成や税優遇措置プロジェクトに投入するライフサイNYC(LifeSci NYC)や、ライフサイエンス関連技術・製品の研究・開発にマッチングファンドを提供するニューヨーク市早期ライフサイエンス資金投資イニシアチブ(NYC Early-Stage Life Sciences Funding Initiative)などがある。LifeSci NYCには、ボストンやサンフランシスコに匹敵するような世界最高水準のライフサイエンスハブの創出に1億ドルを捻出する計画などが含まれており、ニューヨーク市経済開発公社(New York City Economic Development Corporation:NYCEDC)は2018年1月に同計画に関する提案依頼書(request for proposal:RFP)を発行している 。

ニューヨーク市周辺のライフサイエンス系インキュベーション施設やラボスペースとしては、Harlem Biospace、The Alexandria Center for Life ScienceBIOBAT at Brooklyn Army TerminalDownstate’s Biotechnology Incubatorなどがあり、隣接する行政区に位置するものも多い。

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